母の死を受け止め 前へ進もうとする家族

マリアさんとカロリーナさんの遺影

その年のクリスマス前、私はカロリーナさんの家族のもとを訪ねた。部屋の至るところにカロリーナさんと家族の思い出がつまった写真が飾られていた。

長女のマリアさんは、カロリーナさんがホスピスに入っていた5か月間、家族の中でも最も長い時間をともに過ごした。

「母は最期まで病と闘って亡くなりました。安楽死の法制化なんて信じられません。誰かの命を終わらせる考え方は、私にとっては野蛮でしかありません」

ドミンゴさんと6人の子ども

末っ子のアナさんとパルマさんも、母親の死を少しずつ受け止め、一歩ずつ前へ進もうとしている。2人はカロリーナさんの写真が置かれたピアノを弾いて、母親が好きだった曲を演奏していた。

ドミンゴさんとカロリーナさん

6人の子どもたちが口を揃えて「家族の中で一番陽気な人」と評するドミンゴさん。妻が残してくれた子どもたちに目一杯の愛情を注ぎ、温かく見守り続けている。手に取った自身の結婚式の写真をじっと見つめて、目を潤ませながらつぶやいた。

「妻が亡くなったことは本当に辛い経験でしたが、ホスピスという最高の場所で旅立てたことは幸せでした。妻は今も私たち家族とともにいます。命に必ず終わりはきます。だから、自分たちで終わらせる安楽死なんて、絶対にしてはいけません」