「SOS子どもの村」に紹介された里親

陽子さんの窓口となったのは、「SOS子どもの村 JAPAN」という国際NGOの日本法人です。福岡市西区に「子どもの村福岡」を作り、様々な事情があって実の親と暮らすことができない子供たちを預かっています。村には5つの家があり、3棟で里親さんが子供たちと暮らしています。残る2棟でショートステイ事業を引き受けていて、専門の職員が受け入れを担当していますが、市内で里親となっている家庭と連携して、紹介するコーディネート事業もしていて、陽子さんはそれを利用しました。
「陽子さんの決断は、家族からどう受け止められたのですか?」と尋ねたら、パートナーは「預けるの?どこに?」というのが最初の反応でした。でも、里親さんが迎えに来た時にパートナーも立ち会っていて、里親さんにお子さんが一緒にいたことや、保育関係の仕事をしていると聞いて、安心していました。親御さんは「今はそんなサービスがあるんだ。私の時もあったらなあ」と話していたそうです。
「余裕ができたら…私も」

子供を預ける、ということにはためらいがあるかもしれません。しかし、ためるだけため込んで、手を上げることが習慣化してしまうことは、虐待の原因になってしまうかもしれず、大変危険です。
陽子さんは今年4月に初めて子供を預けたのですが、家庭に収入があるので、1日5000円あまりを支払っています(収入が基準以下の場合は無料です)。これまで4回ほど利用しています。2人の子のうち、1人だけを預けることもあるそうですが、心境に変化が出てきました。
陽子さん:「このお母さんたちはボランティアですか?何なんですか?なんで預かるんですか?」とSOSの担当の方に聞いたりもしたんですけど、困っている私みたいなお母さんを助けたいという思いや、本当に子供が好きで里親になった方がたくさんいるというのを初めて知りました。なんか、すごいいい制度だなと思って。
陽子さん:私は今、利用している立場ですけど、もうちょっとしたら子供が大きくなってあんまり手もかからなくなったら、預かってみるのも楽しそう、面白そうだよねーと…。「今預かってもらっているくせに、何を言っているんだ?」と言われそうなのであんまり言ったことないんですけど、ちょっと子育てに余裕ができたら、預かってみる立場にもなってみたいな、とちょっと思ったりもしています。うちはもう2人しか作る予定はないので。他のお宅の子と遊ばせるのは、お互いにとっていいんじゃないかな。あっちの子にもとってもうちの子にとってもいい刺激になるんじゃないかなーと思って。まあ、今は無理ですけど、先々は。ちょっと興味はあります。
もっと、「助けてと言える社会」になった方がいいと思うんです。「助けて」と言われた時に助けてあげられる社会であってほしいですね。ショートステイ里親事業は拡大してきています。福岡市の場合はまず区役所に相談を。ほかの地域でも探してみてはいかがでしょうか。
※福岡市こども家庭課によると、ショートステイを利用した児童数は2021年度に延べ1,200人だったが、2023年度には1,100人増えて、ほぼ倍増。このうち、里親に預かってもらった児童数は、113人から834人と7倍の大きな伸びとなっていて、増えた1,100人のうち大半の700人を引き受けたのが「里親」だったことが分かる。