大会史上初チケット「デジタル化」のメリットとは

チケットはアプリでQRコード化

競技会場では、チケットに特化したアプリを使って、QRコードを見せて入場した。アプリをダウンロードすると、インターネット上で購入したチケットが自動的に取り込まれる仕組みだった。

チケットのデジタル化は、大会史上始めての取り組みだ。オリンピックで約956万枚、パラリンピックで約258万枚のチケットが販売された大会で、チケットが印刷されなかったことによるコスト削減や、環境へのプラスの効果は小さくないだろう。

チケットをデジタル化したことのメリットは、それだけではない。運営面では偽造を防ぐことや、不正に高額で転売するいわゆるダフ屋行為などの防止が可能になる。

観客にとっても、チケットの購入や管理が容易になり、キャンセルもアプリ上でできる。スマートフォンの電池が切れると困ることになるものの、大きな会場ではスマートフォンの充電ができるブースも用意されていた。

さらに、観客として思わぬメリットを感じた場面もあった。パラリンピックでは多くの人が気軽に観戦できるように、チケットの販売価格はオリンピックよりも低く設定され、最低価格は1席あたり15ユーロだった。

陸上競技や閉会式の会場となったスタッド・ド・フランス

約8万人が収容できるスタッド・ド・フランスでは、連日陸上競技が開催されていた。大会前に陸上の15ユーロのチケットを購入したところ、正確な席番号は忘れたものの、スタンド中段から上段にかけての席を確保できたと理解していた。

それが、当日QRコードを見せて入場すると、前から5列目の席に変わっていた。この日は平日の午前中ということもあって、スタンドの上段は空席も目立っていた。前列の席には小学生や中・高校生など団体で来ていた観客も多く、実際に座った5列目の席は、団体席の中にできた空席のようなところだった。

なぜこのような席の変更が起きたかというと、購入した席よりもいい場所にキャンセルなどが出ると、自動的により良い場所に席が移動される仕組みだったからだ。チケットのデジタル化には、観客に楽しんでもらう工夫も込められていた。