カスハラ三重苦
さまざまな組織のカスハラに関するデータを分析していて、いくつかの発見がありました。中でも特筆すべきは、従業員にとってカスハラによるストレスには大きく3つがある、ということでした。
1つ目はカスハラそのものによるストレス、2つ目はまわりのサポートや励ましがないことによるストレス、そして3つ目は、不甲斐ない自分に対する自責感や無力感によるストレスです。カスハラそのものは、行為者が不特定多数の顧客などですから、なかなかゼロにするのが難しいもの。それならば組織は、2つ目、3つ目のストレスを減らす施策に目を向けるのも大事なポイントとなるでしょう。
たとえばカスハラを受けた対応者を、同僚や上司、組織ぐるみで支援し、応援体制を整えることは2を減らすことに繋がります。カスハラの自社版マニュアルや組織フローを策定したり、相談窓口を設ける。日々現場で奮闘しているスタッフを、複数で労い、話を聴いたり、解決策を一緒に考える、そんな多方向の支援が極めて重要です。
また真面目で責任感の強い従業員ほど、難渋なクレームに真摯に対応し、心身の健康を損ねてしまう傾向や、頑張っているリーダーにカスハラが集まりやすい実態があり、これらがさらなるストレス反応に繋がってしまうことが分かっています。カスハラ対策を考える際、顧客の攻撃行動以外の要因で、アプローチ可能なポイントが複数あることが分かりますね。
サービス業・対人援助職は感情労働といわれます。従業員は自分の感情を抑え、いやな気持になったとしてもその気持ちとは裏腹に「いつも笑顔で対応すること」が求められます。このことは、自分の感情と表出する表情との差異で、認知的不協和というものを起こし、それがわたしたちの心に大きな負担となるのです。
従業員が非常識な顧客に耐えながら心とは裏腹の笑顔を浮かべなくとも、心から楽しんで接客できるようになるには、カスハラ客の軽減のみならず、まわりの支援や、従業員のスキル・対処力向上といった環境を整えることが必要です。














