日中国交正常化50年を記念して、平山郁夫氏にちなんだ展覧会「輝ける記憶」が中国の敦煌で開かれています。
平山氏はシルクロードや中国にまつわる風景を描いた作品を数多く残し、また、中国の敦煌の文化財保護などに尽力しました。展覧会を主催した「平山郁夫シルクロード美術館」平山東子館長に話を聞きました。

Q今回展覧会を開いた狙いを教えてください。
平山館長:特に西アジア中央アジアを中心にガンダーラ地方などシルクロード地域の金属でできた器や像を見ていただくテーマで開催しています。
Qコロナで人の交流が難しい時期に展覧会を開く苦労はありましたか。
平山館長:今世界中がこういう状態なので、国内から作品を持ち出す時から障害があった上、突然中国国内の都市がコロナ対策で封鎖されてしまったり、敦煌でも直前までそういうことがあったため、工事が遅れたりもしましたが、いろいろな方のご尽力と信頼関係でやっと開催できました。開催できた時は奇跡のようだと感激しました。
Q日中国交正常化50年の年に開催することについてどう考えていますか。
平山館長:今年は国交正常化50年にあたるということで、何としても開催したいという中国側の研究院の先生からも強い要望がありました。こういう展示を通じて物も人も交流が深まりますので、これをひとつのきずなの強化に、ささやかではありますが貢献できればと思っています。
Q今の日中関係についてどうとらえていらっしゃいますか。
平山館長:もともと平山郁夫も日本の文化の源流は、お手本になったのは中国の文化だからと、尊敬の念をもって中国の文化に接して、ずっと交流してきたので、私どもも敬意をもって、お互いに交流できればと思っております。
50年の節目の年に日本と中国のみならずシルクロード地域一帯の文化の多様性ですとか、お互いの関連性を見つめなおすきっかけになるような企画になればと思います。
シルクロードを行きかう「キャラバン隊」を描いた平山郁夫。
平山さんは、展覧会もまた、「キャラバン」だと感じています。
平山館長:展覧会の開催を通じて、文化を、技術を伝える。これは「文化のキャラバン」ではないかと思いました。例えば、展示にかかわった中国人と日本人がお互いに自分たちの道具を見せあったり、日本の作業員の梱包技術や運送方法、保管技術を学んだり、展覧会を通じて、道具や技術を交換している。これは現代のキャラバンであると感じます。
古代シルクロードを人や物や文化が行きかったように、展覧会の開催を通じて日本と中国の間を人や物や文化が行きかう。これは「文化のキャラバン」だと思うのです。
人が、物を介してつながっていく。戦争が起きればそれはストップしてしまう。特に今、新型コロナの影響で人や物の交流が難しくなっている。しかし今回の展覧会で、いろいろな人が助けあい、コロナのおかげで逆により一層日中のきずなが深まったと感じています。この展覧会が双方の文化を深めるきっかけになればと願っています。
展覧会は敦煌で11月18日まで開かれたあと、北京など中国各地を2年あまりかけて巡回する予定です。
北京支局長 立山芽以子