テレビでは伝えきれなかったデジタル庁の「デザイン」と「データ」の話

◆デジタル庁の「3つの軸」

デジタル庁が発足して1年を迎える9月1日に向けて、私は「3つの軸」でデジタル庁を描けるのではないか?と考え、取材を進めてきました。

ひとつは 「デザイン」
ひとつは 「データ」
ひとつは 「働き方」 です。

それぞれ「キーマン」となる人がいて、8月31日に「Nスタ」で放送した企画は、霞が関の「働き方」の先進事例を目指す、須賀千鶴さん(経産省・デジタル庁の兼務 2003年入省)をメインにした内容になりましたが、ここでは、テレビでほとんど伝えられなかったデジタル庁の「デザイン」と「データ」の話について触れてみたいと思います。

◆デジタル庁の「デザイン」



事務方トップの浅沼尚デジタル監(46)。デジタル監になる前はCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)でした。つまり、デザインの専門家です。デザインと聞くと、日本では多くの人が色や形など「見た目」のデザインの話と勘違いする人が多いのですが、浅沼さんが携わっているデザインの領域はもっと広い概念で、「徹底的にユーザーのことを考える」不思議な熱量を感じる方でした。

今回のインタビューから、一部を紹介したいと思います。

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<浅沼尚デジタル監 インタビューより一部抜粋>

Q:「デジタル庁が何をしているのかわからない」との声は多いが

日本社会のデジタル化(DX)について、ある程度今後の展開も含めて(中長期の話を)理解できている人は、実はかなり少ない訳です。

その中で、安心安全な形でしっかり使ってもらうことを考えると、我々はもう少し「コミュニケーション」のところをわかりやすく、「こういう未来、こう生活の利便性があがるんですよ」というところを、具体的に伝えていくこともセットなのかなと思っています。そこはしっかり今後注力したいと思っています。

Q:デジタル化の入り口=マイナポータルの課題について

今のマイナポータルは「使える機能」は、たくさんあるけど、それがちゃんと理解されてない、もしくは使いにくい部分があるというところが、普及を妨げている理由かなと思っています。

実際にマイナンバーカードを「持ってください」と、国民にお願いをしている中で、その「先」にある利便性が、まだ伝えきれていない。マイナポータルをしっかり利便性を感じる一つの場として作っていくことが、まず大事なアプローチと考えています。年度内にリニューアルする予定です。

Q:どのようにリニューアルするのか

大きい機能とか、大規模なサービスを、一気に「ズドン」と出す・・・というやり方は、正直デジタルサービスにはフィットしないと思っています。

一番大事なのは、最終的に利用者がどう感じるか、どう使われるか、という所であって、我々が「こういう機能を実装してくんです!」というのはあくまで「提供者目線」になってしまうので、少しずつ少しずつ、小さなサービスに小さな変更を加えながら、利用者=国民の「フィードバック」を頂きながら、最終的に多くの国民に使ってもらえるサービスにしたいなと思っています。

当面は「インターフェース」をわかりやすいデザインにして
①「みつける」=出産・保育園・引っ越しなどライフステージごとの表示に変更
②「しらべる」=自分の医療費、薬の情報などを確認できる表示に変更
③「わすれない」=年に1度など、自分に必要な手続きについて一目でわかるように表示
3点をサポートすることを強化していく予定ですが、その後、より使いやすくするところを目指して「UI・UXをチューニングする」というアプローチになります。

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◆時代の変化に柔軟に対応できるか


一度「正しいとされるカタチ」を決めると、なかなか変えない、変えられないのがこれまでの霞が関でした。

不確実な時代は、常に「アジャイル」で変化する、柔軟な意思決定ができる組織が強いとも言われていて、デジタル庁はその方向を目指しています。

ただ、柔軟なシステム開発をする上で、今の政府の調達制度は課題が多いとも言われていて、その改革にむけた動きもはじまっています。

絶対的な「正解」が無く、変化のスピードが加速している時代。デジタル庁の今後の「デザイン」と、その変化に注目しています。