漁師の「熱いハート」とあきらめない心が、2人の釣り人の命を救いました。
台風7号の大波に流されて海に転落した釣り人2人を救助したとして、大船渡市の7人の漁師が表彰されました。

釜石海上保安部と大船渡地区消防本部から表彰を受けたのは、大船渡市赤崎町の漁業・磯谷良彦さんら7人です。
8月16日、午後3時ごろ大船渡市の外口地区にある長崎漁港の防潮堤で釣りをしていた2人が、台風7号の影響による大波に流されて、海中に転落。荒波の中に放り出されてしまいました。

釣り人2人は湾内のブイにつかまり、大きな声で助けを求めましたが、波の音と強風のため声はむなしくかき消されてしまいます。
しかし、普段から波の音と強風の中で作業している漁師の耳は確実に2人の叫びをとらえていました。
異変を感じた磯谷さん。急いでかけつけ、2人に向けて救命用の浮き輪を投げます。
ところが強風のため、なかなか2人のもとに届きません。
「困った人、危険に陥った人をそのままにしない」が漁師の鉄則。
磯谷さんは辛抱強く、浮き輪を投げ(届かず)、引き戻してはまた投げることを繰り返しました。そしておよそ10回目、浮き輪が釣り人2人の手の届くところに届きました。
2人が浮き輪にしっかりつかまったことを確認すると、漁師7人は声を合わせ、ロープを手繰り寄せました。2人は少しずつ岸に近づき、ついに陸地へと助け上げられました。

(磯谷良彦さん)
「浮き輪を10回ぐらい投げて、やっと届いて何とか助けることができました」

少し遠慮がちに語る磯谷さんの目に、無事2人を助けることができた充実感がのぞきます。
「困っている人をそのままにしない」漁師7人の熱いハートが、一つの水難事故を未然に防ぎました。

ただし、このような「頼れる男たち」がいつも近くにいてくれるとは限りません。
釜石海上保安部では、釣りに行く場合、しっかり事前確認をするよう呼び掛けています。

(佐々木篤保安部長)
「岸壁で釣りをするような場合でも行く前には必ず気象、それから波の高さといった海象もしっかりと確認して」

また、「海のレジャーの際はライフジャケットの着用や携帯電話などの連絡手段の確保をし、安全に楽しんでほしい」と話していました。。