備蓄放出には「時間がかかる」と言い訳
政府備蓄米を放出しない理由として、農水省があげているのが、備蓄米の放出には、入札など手続きに時間がかかるのというものです。
今からでは実際の放出が新米の出回る9月下旬になってしまうので意味がないと言うのです。
驚くべき居直り、言い訳です。小売りの現場からコメが消え始めたのは、もう随分前でした。
7月の消費者物価でさえ、コメ類の価格は17%も急騰していました。
その時から準備していれば、十分、間に合ったはずなのに、それを棚に上げて、やらない理由を探すことだけは素早いのです。
備蓄放出のアナウンスメント効果は絶大
備蓄米の放出は、実際の放出量以上に、アナウンスメント効果が大きくあるはずです。
農水省の見立て通り、全体の需給はひっ迫しておらず、流通在庫が滞っているのだとしたら、備蓄米の放出の報を機に、価格が下がり始め、そのことが在庫放出につながるからです。
コメは多少の保存は効くので、在庫を持つ生産者や流通業者は、価格がどんどん上がっていく時には、売り急ぐ必要がありません。
売り惜しみと悪意がなくとも、そのまま持っていればいるだけ、価格が上がるのですから。
しかし、備蓄米の放出が少しでも始まるか、或いは、放出に前向きな姿勢を示すことで、市場価格は下落に転じれば、それを機に在庫を吐き出す動きが始まるのではないでしょうか。
今回の一連の「コメ騒動」は、農水省のコメ行政がいがに消費者不在であるかを物語っています。
消費者不在の農政が、結局のところ、日本の農業を強くすることに失敗してきたという歴史に、目を向けるべきです。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)