東日本大震災発生後、沿岸部に整備された津波対策の防潮堤。「海が見えない」「圧迫感がある」といった声は少なくありません。こうした中、9月、宮城県石巻市で防潮堤に巨大な壁画を描く、被災地でも例のない取り組みが始まることになり、住民も期待を寄せています。

石巻市雄勝町。震災後に整備された防潮堤は、高さ9.7メートルに上ります。


漁師の大和恵一郎さんと妻の千恵さん。防潮堤は必要だと考えているものの思いは複雑です。


大和千恵さん:
「直立で建っているので圧迫感というか、高さをより感じてしまう場所」


こうした中、9月から始まるのが「海岸線の美術館」と名付けられたプロジェクト。防潮堤に、長さ50メートル以上に渡り壁画を描きます。
企画した団体の高橋窓太郎さん。3年前、雄勝で見た光景がきっかけだと話します。


壁画制作を企画SEAWALLCLUB 高橋窓太郎さん:
「地面に立った時に(海が)見えなくなっている風景に、心を痛めた。防潮堤に壁画を描いて、マッチングした風景をつくれたらよいな、と思ったのがきっかけ」


絵を描くのは、雄勝小中学校でも壁画を制作した芸術家の安井鷹之介さんです。


防潮堤に壁画を描く安井鷹之介さん:
「モノクロな壁に対して、彩りを与えたい」


雄勝の自然や人々の営みが描かれる予定で、地元の住民たちも下地の色を塗るなどして参加します。

漁師 大和恵一郎さん:
「子どもたちもただの壁より素敵な絵が描いてあった方が見に来るし、ほかからも人が集まる」


妻・千恵さん:
「壁に思いっ切り体を使って絵を描ける体験はなかなかできないので、貴重な体験を楽しんでもらいたい」


長男・恵士郎くん:
「絵を描くのは得意ではないけど好きなので、色を塗ったりするのを頑張りたい」


壁画制作は9月中旬から始まり、11月下旬に完成する予定です。


今回の壁画制作は、防潮堤を管理する宮城県からも、許可が得られたことで実現が可能となりました。企画した団体は現在、制作費用をクラウドファンディングで集めていて8月31日が期限となっています。