冠動脈を含めた血管の病気

ここで血管の病気について解説します。冠動脈を含めた血管の病気は大きく3種類あります。

一つはシーズン2では何回も出てきている血管の狭窄です。血管が狭くなってしまい、酷くなると閉塞してしまい血液が流れなくなってしまいます。タバコ、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、家族歴などが主な原因で、血管の壁が硬くなり(動脈硬化)、内腔は汚くなってくるのです。

これが冠動脈で起こると心臓の筋肉に血流が足りなくなり狭心症や心筋梗塞を起こしてしまいます。ダイレクトアナストモーシスはその狭窄や閉塞した部分を新たな動脈(おもに内胸動脈)に取り替えるという術式でした。一般的には狭窄や閉塞部分の先にバイパスする、つまり迂回路を作ったり、狭窄部分や閉塞部分にステントを入れることで血流を改善させて治療しています。

もう一つは先程述べました解離です。血管の壁がなんらかの理由で2枚(外膜と内膜)に割れてしまい、血流が壁に流れ込んでしまい本来流れるべき血流が流れなくなってしまうのです。

また外膜は通常の壁よりも薄いので破れやすく、破れると大出血してしまいます。シーズン1では何度か出てきましたが大動脈の壁が割れてしまうと大動脈解離となり命の危険に晒されてしまい緊急の手術が必要となる場合があります。

猫田さんが8年前に維新大の早川先生のオペに入っていた時、早川先生は大動脈解離の処置をするためにオペ室を出ていきましたよね。あれはあり得なくもないシチュエーションなんです。目の前の患者さんが落ち着いていたら(結局は大動脈縫合部分から大出血してしまうのですが)、大動脈解離の患者さんの診療を優先することは間違いではありません。

そして最後の一つは瘤です。今回の治験患者と早川先生が冠動脈に瘤ができてしまう冠動脈瘤を患っていました。

大動脈に瘤ができてしまう病気が大動脈瘤でシーズン2の2話で黒崎先生が行っていた手術が大動脈瘤の手術(全弓部置換術)になります(天城先生に「どうしてこんなに時間かかるのか知りたい」と黒崎先生言われてしまってましたね)。

瘤の治療はその部分を取って新しい血管に取り替えたり、瘤を切除(切り取り縫合する)して血流がなくなってしまう場合にはバイパスしたり、またはコイルといって瘤の中に細い糸クズをカテーテルで詰めて中を固めてしまう、またはステントを入れてしまい瘤に血液が流れ込まないようにする…などなど色々な治療方法があります。

これは瘤の大きさ、できた場所によって最適な方法が異なり、様々なデータを考慮して治療方針は決まるのです。天城先生がエルカノちゃんと話していて「瘤をコイリングしてバイパスすべきです」と言われてダイレクトアナストモーシスは必要ないとオペを中止しています。

このシーンで天城先生は患者さんの病状にとって最適な方法、つまりオペの成功率が最も高く長期成績が1番良い方法を選択しており、全ての患者さんにダイレクトアナストモーシスを行おうとはしていないということが分かります(4話では詐欺行為と訴えられそうになっていましたが…汗)。