広島土砂災害きっかけに報道現場も進化

RCCにとっても10年前の災害取材は色々と課題を残した。中でも大きかったのは、当時普及し始めていた「LIVE U」や「スマテレ」といったモバイル中継装置がなかったことだ。

山の斜面に広がる住宅地で細い路地が入り組んでいた被災地にSNG車(人工衛星利用の中継車)は近づくことはできず、すでにモバイル中継装置を導入していた広島の他の系列局と比べて機動的な中継対応や取材映像の伝送の面で大きな遅れを取った感は否めない。また、当時は取材・編集から送出までテープだったこともあり、映像の整理や素材共有がうまくいかない課題も抱えていた。

この広島土砂災害の苦い経験もあって、RCCでは、モバイル中継装置の導入やノンリニア編集への切り替え、サーバー送出導入など報道システムを一気に改善させる動きにつながった。

その結果、広島土砂災害の4年後、さらに広範囲で甚大な被害が出た西日本豪雨が起きたが、発生前にシステムの更新が完了していたこともあり、報道現場における混乱は広島土砂災害に比べると少なかったように思う。西日本豪雨では発生直後から平日は毎日、午前に1時間、午後に3時間の計4時間、災害情報を伝えるローカル番組を2週間にわたって放送し続けることができた。