「速報性」と「日常性」
反省点は大きく分けて2つある。「速報性」と「日常性」だ。
「速報性」はクマに限らず、報道が常に追い求めているものだが、災害時はその重要性が特に増す。クマの出没を知らせるのも、命を守るためだ。災害報道と同様の意義があることを強く意識して、即座に、繰り返し注意喚起する必要性を感じた。
クマの出没を速報すると同時に、「どうしたらいいか」も伝える必要があると感じた。クマが出てからでは遅い。あらかじめ「北海道民の常識」として、観光客も含めみんなが知っている状態を作ることが理想だと感じた。
さらに、東区のクマ出没の原因には、人間社会が関わっていることもわかった。クマは身を隠せる、背の高い草や川沿いを好んで移動する。みどり豊かなまちづくりの結果、緑地や川を伝って「いつの間にか住宅地に入ってしまう」、クマの通り道ができてしまっていた。迷い込んだクマは、パニックになって人を攻撃したと見られている。
これは裏を返せば、「草を刈って見晴らしを良くする」という対策があるということだ。

私は2018年の入社当初から、全道各地のクマ出没を取材してきた。出没の背景には複数の「人間社会の要因」があり、その数だけ「人にできる対策」があった。しかし、出没を受けて対策に励む地域もあれば、まだクマが身近でない地域はなかなか対策に乗り出さず、その隙に被害が起きてきた。同じ課題が繰り返されているように感じた。
そこで、「クマに出会ったらどうするか」「そもそも出会わないために何ができるか」を、広く日常的に伝えていくことが重要だと考えた。

ただ「日常性」については、これまでのテレビ報道だけでは足りないのではと感じていた。