一つのニュースを放送して、終わりにしない

HBCではこうして、放送はもちろん、デジタルや地域連携、イベントといった分野でも発信を重ねてきた。速報は命を守るために欠かせない。さらに「その後」を取材して、原因を突き止め、教訓を広める責任が、メディアにはあると思う。

2021年6月 札幌市東区の住宅街に現れたクマ

それはクマに限らない。災害や熱中症、交通事故など、繰り返し伝えることで防げる被害が多くある。今、HBCを含むJNNは「TBS NEWS DIG Powerd by JNN」というサイト/アプリで、命や暮らしを守るための情報を広く発信するようになった。JNN全体で日々話し合い、発信力の拡大を模索しているが、これも「速報性」「日常性」を追い求める一つのツールだと感じている。

報道現場が、毎日の事件事故一つひとつに向き合う大切さは変わらない。その最新情報をどう多くの人に届けるか、どう命を守る行動にまでつなげるか。部署や会社、媒体の垣根を超えて協力し、「もっと多くの人に」と追求していく役割が、今のメディアにはあるのではないだろうか。

<執筆者略歴>
幾島 奈央(いくしま・なお)
2018年、HBC北海道放送入社、報道部で警察・司法担当。2021年7月からはWEBマガジン「Sitakke(したっけ)」の編集部で、ニュースから学ぶ暮らしの知恵や、クマとの共存について考えるヒントなどを伝えている。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。