予報精度が向上しても被災地が生まれてしまう台風災害

記録的な暴風で関東地方に甚大な被害をもたらした令和元年房総半島台風

筆保教授は令和元年房総半島台風の被害調査に参加したとき、被災地の光景を目の当たりにして、研究者として大きな衝撃を受けたそうです。「僕は20年ほど前の学生のときに、台風の被害が起きた現場へ連れて行ってもらったことがあります。当時見た被災地の光景と、その20年後に見た房総半島台風の被害の様子が、ほとんど変わっていませんでした。」

気象庁の台風の予測精度は年々向上しており、人命を守るために上陸前に避難が呼びかけられたり、交通機関が1日前から電車を止めたり、いまではさまざまな対策が進められています。しかし、「我々の台風に対する防御力は、昔と比べてそこまで変わっていない気がします。守りたい建物や外にあるものは、そこまで強くなっていないです。わかりやすいのが、電柱です。突風で50m/sの風が吹くと、電柱は倒れてしまうことはわかっています。50m/sの風が吹いても、倒れないように何かしているかといえば、しているわけではないですよね。台風が来ないように、もう祈っているだけです。」と筆保教授は悔しさを滲ませます。

現代でも依然として、台風は人間にとって脅威である存在です。しかし、台風の脅威をなくして、2050年の未来には台風を“恵み”の存在に変えることを目指すプロジェクト「タイフーン・ショット計画」が始動しています。(インタビューの後半記事で、タイフーン・ショット計画について紹介します)

関西エリアに甚大な被害をもたらした2018年台風21号