困難を独りで闘い“生き抜いた” 迎田良子さんが安楽死

エリカ・プライシック医師と迎田さん

「ハロー、良子。あなたに花をもってきたかったの。日本のサクラのようなものよ」

「ライフサークル」代表のプライシック医師が部屋に入り、迎田さんを抱きしめた。そして手に持っていた一輪の花を渡した。

「ありがとう」と満面の笑みを浮かべ、迎田さんは愛おしそうにその花を見入っていた。

致死薬が点滴に投入され、安楽死の準備が整った。スイスでは医師が患者に薬物を投与して、死に至らせる行為は禁止されているため、処方された致死薬を、患者本人が体内に取り込む必要がある。

ベッドに横たわった迎田さんは、震える手で点滴のバルブをもちながら、プライシック医師に最後の感謝を伝えた。

迎田さん:「あなたに会えて本当に幸せだった」
医師:「誰もがスイスではなく、自分が住む場所で安楽死できたらいいのに」
迎田さん:「ここに来られて本当に幸せ。夢が実現したわ」
医師:「点滴のバルブを外したら何が起こるかわかりますか」
迎田さん:「私は死にます」
医師:「それがあなたの最後の願いならば、バルブを開けて良いです」
迎田さん:「イエス、OK」

震える手を抑え、バルブを開けた迎田さん。静かに目を閉じ、「ありがとう、エリカ(プライシック医師)。あなたの幸運を祈っている」と呟き、数分後に呼吸を止めた。

迎田さんの遺骨は、レマン湖に散骨されたという。