おからの発酵飼料で温室効果ガス約27%減
昭和33年に建築された牛舎の中で、試験的に飼育されている肥育牛。生後12か月と生後19か月の2頭の牛の餌には、牧草や配合飼料などと一緒に、県内の食品会社から廃棄物として出てきた「豆腐のかす」であるおからが加えられていた。

畜産技術センターでは、おからを50%含む発酵飼料を肥育牛に与えている。おからのほかに、配合飼料、小麦の表皮部分であるふすまなどを混合して密閉容器に詰め込み、10日ほどかけて乳酸発酵させる。この方法で1か月程度保存が可能な発酵飼料ができる。

おからの発酵飼料は、地元から出る食品残渣を活用した餌であるエコフィードとして、昔から畜産技術センターで作られてきたものだ。
そこに地球温暖化防止の観点が入ったのは、2年前に試験研究構想を見直してから。製品の生産段階における環境負荷を定量的に評価して「見える化」するLCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて、おから発酵飼料の原材料の生産を流通している配合飼料の購入と比べてみると、温室効果ガス排出量がCO2換算で約27%減少していることがわかった。
この調査は餌に関する部分だけが対象だった。今年度から、この餌を給与した肉牛の肥育試験を開始し、LCAにより肉牛生産の環境影響評価を多方面から実施するとともに、牛のメタン排出量を測定する。おからに多く含まれる不飽和脂肪酸によって、胃内の水素が消費されるという報告もあるので、牛のげっぷに含まれるメタン削減効果も期待される。あわせて、生産性や枝肉の質についても評価を行うことにしている。

新たに「海藻」でメタンガス削減効果を研究
さらに、今年度から新たな餌の研究も始めている。それは地元の海で採れる海藻だ。神奈川県内では横須賀市や横浜市でノリ、ワカメ、コンブの養殖が行われている。板ノリを作る際の切れ端や、出荷できないワカメやコンブを餌に活用できないかを探る。

海藻を選んだのには理由がある。国内外のこれまでの研究で、カギケノリを餌に混ぜることで、メタンガスの発生を大幅に抑制できることがわかってきたからだ。ただ、神奈川県内にもカギケノリは自生しているものの、量が少ない。牛の餌として使うためには大量に養殖する必要があるため、廃棄されている他の海藻を活用する道を模索することにした。
これまで試験的に牛の餌に混ぜてみたところ、ノリやワカメを気にせず食べる牛もいたが、ノリをなかなか食べない牛もいた。今年度はどの海藻がどの程度メタンを削減できるのか、また、どのような方法で食べさせるのかを検討していく。