日本に「アポロの塔」
なぜこんなところにこんなものが・・・という世界遺産は他にもあります。そのひとつが日本の世界遺産「高野山」。高野山の中でも最も神聖な場所といわれる「奥之院」には、有名な戦国大名から近代の経済人や企業まで、いくつもの墓と供養塔が並んでいます。「日本の総菩提所」ともいわれ、織田信長の供養塔、さらに信長を討った明智光秀の供養塔もあり、歴史好きには興味が尽きない場所なのですが、ここに高さ3メートルはあろうかというロケットが立っています。アポロ11号そっくりの形で、なんでこんなところにアポロ・ロケットがというと、実は新明和工業という航空事業を営む企業の慰霊碑なのです。在職中になくなった社員を慰霊するためのもので、その名も「アポロの塔」。奥之院の一番奥には弘法大師・空海の御廟があるのですが、そこへ向かう厳かな参道の途中でロケットを見つけたときには、かなりビックリしました。
「北京の故宮」にスターバックス

もうひとつビックリしたのが、2000年に中国の世界遺産「北京の故宮」の中でスターバックスを見つけたときです。歴代皇帝が暮らし政治を行った巨大な宮殿・紫禁城。故宮博物院として大部分が公開されていますが、あまりにも広すぎて南の入り口から北の出口まで歩いても歩いてもたどりつきません。

ヘトヘト、さらに喉はカラカラという状態で玉座のある太和殿の裏側で見つけたのが、スターバックス。一応、紫禁城の壁と同じベンガラ色の建物で周囲となじむように配慮されていましたが、看板はおなじみのスターバックス。中国皇帝の居城に、アメリカ発のコーヒーチェーン店というミスマッチに驚きつつ、早速、カフェラテを買ってみましたが・・・当時の日記を見直すと「味はいまひとつ」と記してあります。この紫禁城のスターバックスは、「故宮の荘厳さを損なうのでは」と議論となり、2007年には閉店してしまいました。
世界遺産で見つけた「こんなところにこんなものが・・・」。サンスーシ宮殿のジャガイモには歴史の裏付けがあり、高野山のロケットも聖地の慰霊碑という必然がありましたが、故宮のスタバはどうやらミスマッチ感だけだったようです。