モチベーションの維持と環境の選択

また、加藤さんはリクルートを辞めた理由の1つとして「未来が見えてしまったから」と語る。高い収入や家族にも恵まれ、職場での成功を収めたものの、見えない未来の方がモチベーションも高く、ワクワクを感じられたという。

「優秀な上司と部下に恵まれ、好きな新規事業で成果を上げて、自治体の有識者として社会的信用も築いた。でも、ここから定年まで20年間、手なりの人生、耐えられないと。先が見えるとそれが心の安定に繋がる人もいますけど、見えない未来の方が自分のモチベーションが高いし、ワクワクできる。なので自分のモチベーションがどういう時に高いのか自分でよく知って、その環境を選び取っていくことが大事だと思います」

フェーズの変化と起業家の葛藤

さらに加藤さんは、スタートアップのフェーズの変化を“旅人”に例えて学生たちに説明した。

「例えば、ビジネスのフェーズを『0→1』、『1→3』、『3→7』、『7→10』に分けるとしたら、『0→1』は自分で何でもやって、自分で結果を出していくという、荒野のバックパッカーみたいな感じです。その荒野のバックパッカーがグランピング、グランピングからホテルになっていく。これが短期間に起こるのが成長するスタートアップなんですね。

ホテルになると、自分でシーツを取り替える必要はないけど、代わりにシーツを取り替えたり、料理する人を雇って、組織として運営していくことが必要ですよね。そうなると事業の手触り感は少なくなる。バックパッカーの時はご飯1つ作るのにも火起こしから自分でやっているわけだから。それが楽しいと思う自分がいて、でもホテルのマネージャーをやらなきゃいけない。そこが事業家から経営者への葛藤なんだと思います」