シロアリの社会には「カースト(階級)制度」がある!
ーシロアリの巣はどう成り立っているのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「シロアリの巣は分業で仕事が成り立っています。シロアリは『真社会性』昆虫です。女王(【画像③】)と王から生まれた子供たちだけで生活をしています。人間の社会とは違う社会です」
「階級で分かれ、子供を残さず、生涯自分の巣のために働く階級があります。人に置き換えると、ギョッとされる方も多いかもしれませんが、シロアリの一匹一匹が意志を持っている社会、ということではなくて、巣を一つの大きな社会だととらえて、シロアリの一匹一匹が血液だったり、臓器だったり、という分業から成り立つ生き物だとイメージをされるといいかもしれません。これを『カースト(階級)制度』と言います」
ー階級は、生まれながらに決まっているのでしょうか。
(大野さん)
「生まれたての卵の段階では、自分がどの階級になるかは決まっていません」
「女王や王が巣の中をフェロモンで制御しているといわれ、卵の段階ではまっさらで、決まっているのはオスになるかメスになるかだけで、巣の中をうまくコントロールしていて、フェロモンの命令に従って自分の運命は決まるようです」

(大野さん)
「女王アリと王アリは交尾して卵を産む専門です」
「女王と王は最初に巣作りを始めます。結婚飛行をして、無事新居にたどり着いた新婚さんは、すぐに子育てに励みます。どんなに大きな巣も、最初はこの2匹。シロアリは暗くてじめっとしたところが好きです、と最初にお話ししましたが、この時一番の敵は『カビ』などの菌類です」
「放っておくとこういう菌類にやられてしまいます。だから体をきれいにしないといけないので、お手入れが欠かせません。でも、一匹だと自分の体すべてをきれいにすることはできません。2匹がお互いの体をきれいにお手入れしあいながら一生懸命子育てします。不慮の事故などで一匹になってしまったらもうそこで命運が尽きてしまうのです。お互いの体をグルーミングしながら、卵も守って巣作りを始めます」
「しばらくすると、最初に産んだ卵が孵化して小さなシロアリの赤ちゃんが生まれてきます。この赤ちゃんは孵化してしばらくするとすぐに働くことができるようになります。最初の子供たちが餌を採ったり、卵を守ってくれたりするようになると、女王と王はいよいよ子作りだけに専念するようになり、子供たちから世話をしてもらいながら、女王は毎日多いと数十個の卵を産むようになります」
「それ以外の家事は子供たちに任せて巣を繁栄させるための産卵にすべての力を使うのです。昆虫の中では長生きで、最初の女王は10~20年、王は数十年この生活を続けます」

「職蟻」は巣の創設や仲間の世話などの雑用専門
「職蟻は巣を大きくするために一生働き続けるアリです。餌をとってくる、巣を大きく拡張する、卵の世話をする…。みんなで協力して巣の中で働きます。性別はオスメスいるのですが、色恋沙汰には全く目もくれず、子供も残しません」
「それもそのはず、職蟻たちはみんないわゆる幼虫で、成熟をしていません。自分の兄弟たちが立派な仲間になるように生涯をささげ、寿命は数年ありますが、その間巣のために毎日働きます」
「十分に大きくなった巣の中では、その中の選ばれた個体が、ニンフ(次の女王や王、いわゆる翅アリになるか、巣に残る補充生殖虫になる個体)と呼ばれる翅が生えそうな形の職蟻になったり、巣を守る専門部隊、兵蟻になったりします」

「兵蟻」は外敵と戦う専門
「兵蟻は巣を守るために育った、戦うことに残りの人生(蟻生?)を捧げるソルジャーです。体の3分の1にもなる大きな頭に、立派な大あごを持っています」