「ドローン班」を立ち上げ“番組”を企画

その後技術部門とも協力して「ドローンを導入したらどうなる?」というシミュレーション策定に奔走しました。外注、自社撮影、だれがやる?練習は?全社的に人員体制見直しも始まった中での新たな業務発生は現実問題として難問山積でした。安全性の面から社内には否定的な意見もありました。

当時は正直「勢いで発車したらろくなことにならない」と感じていました。そうした中でも2016年春、とりあえず番組としての「長崎ばーどアイ」をスタートさせようということになり、まず外部映像を購入することから始めました。自分たちでは撮らずに外注する。当時としてはそれが一番現実的でした。

最初に映像を撮影していただいたのは佐賀県でドローン業務(AIR FLEX)をやっていらっしゃる本山哲男さんという方です。もともとは農薬散布のラジコンヘリコプターのオペレーターでその技量で日本一にもなられた方です。撮影現場に数度同行し安全対策やドローンによる映像撮影のコツを教えていただきました。私としては田本さんに続いてこの世界で出会った2人目の先生です。何よりもリスク管理の方法は得難いものでした。

そして、とりあえずのノウハウを知り、その流れで私と当時NBCのカメラマンだった浦裕樹君と2人態勢で自社内製でのドローン撮影班がスタートすることになりました。

以下は、当時社内向けに書いた番組企画書からの抜粋です。

仮「長崎ばーどアイ」(ドローン企画)
「ドローンによる空撮はわれわれの業界にとって夢のある世界ではあります。しかし、それを使ったテレビシリーズが定着したという話を聞いたことはなく、さほど浸透していない模様」

「去年暮れの改正航空法の影響もあり自由度はなくなっています。社会にもドローンに対する批判的な見方が存在しているのは事実です。なので、始める前に絶対に人身事故、第三者への対物事故を起こさないという体制ルール作りがまず求められます。その一方で政府がドローンでの宅配など成長産業として位置づけている面もあり、ゼロではなく何らかの形で携わり、ドローンの可能性を探る必要もあるかと感じます」

自社撮影スタート ローコスト化にめど

NBCスタッフでドローン撮影を始めたのは2016年の7月からです。当時私は報道のデスクもしていました。報道現場に詳しくない人のため簡単に説明しますと、デスクはニュースの組み立てをするために記者配置を考えたり原稿チェックをしたりする仕事です。基本的に外に出れない仕事です。なので私が撮影するときは休みの日、「休日返上」でしたが、まだ働き方改革が浸透する前でしたので、そのことが普通に許された時代でした。

最初に撮影したのはひまわり畑でした。いまみるといろいろ足りない部分が多い映像でしたが、ローコストでの(外注の問題点は予算でした)ドローン映像が取れる確証が得られ、この時初めて「長崎ばーどアイ」がシリーズとして続けられるという自信を得ました。

以後、県内の陸上、海上、山岳地帯などの撮影を続けることになります。一般的な撮影に加えてドローンの法的、性能的な限界での撮影にも挑戦することになります。

日本史の教科書にも出てくる史跡「出島」。“扇形”を表現するため法定高度を超える250メートルまで上昇する必要があり、各機関との調整を経て実施