■介護とテレワークの両立「一件もうまくいっていない」

川内さんの話を聞いていると、確かにテレワークは介護の味方ではない、ということがわかってきました。しかし、何かいい両立の道があるのでは?という儚い思いを川内さんの言葉が打ちのめします。

「『テレワークをすることで、仕事を上手に調整して親を介護する時間を増やす』と考えた時点で、もう“終わってる”。そうではなくて、親がいかなる状況にあっても自分の生活が崩れない体制作りをするのが両立

介護とテレワークの両立は、一件もうまくいっていないです

ーー一件も?

「年に600件くらい相談を受けていて、テレワークしながら介護されてるケースはあるんですけど、一件もうまくいっていない」

■本当の両立のために「自分の親の介護はしてはならない」

「介護のためのテレワークを止めることで、通常通り出社し仕事のパフォーマンスも上がり、介護状態もよくなる、これが本当の両立じゃないですかね?」

親が介護状態になったとき、やるべきことは自分で介護をすることではなく、親が困っていることの解決策をプロに相談することだと川内さんは強調します。

「我々介護職であっても、自分の親の介護はしてはならないと習います。元気だった時のその人を知っていると、できなくなっていく姿を見て、かわいそう・情けない・申し訳ないという気持ちになる。そうなると、ついつい感情が前に出ていくし、何でもやってあげたいという気持ちになりますよね。

親も相手が子どもだと何でも言ってくる。どんどん依存して本人ができなくなることが増えて介護のタスクが増えてしまう。やっぱり介護は身内にはできないと私は理解しています」

特に日本では「自分の親は自分が看なくては」という人が多い傾向だといいますが、実は自分よりずっと慣れているスタッフに看てもらった方が効率もいいし、家族のためにも、介護される本人のためにもなるのだということです。