コロナ禍により普及したテレワーク。介護をする人にとって仕事と介護を両立できるいい制度であるという認識もあります。しかし、「介護とテレワークの両立がうまく行っているケースは一件もない」と警鐘を鳴らす専門家がいます。その理由はなんなのでしょうか。
■2021年の介護離職者は過去最多になる可能性 テレワークは介護の味方じゃなかった?!
「テレワークを活用して介護と仕事の両立を!」これは東京都産業労働局のホームページに書かれている言葉です。また、テレワークを推進する総務省のサイトにも“テレワークがもたらし得る効果”の一つとして“介護との両立”が挙げられています。
実際、厚労省が発表している「介護・看護が理由で離職した人の数」は年間9〜10万人ほどで推移していましたが、テレワークが広がってきた2020年には7万500人まで減少しています。

これは、従来であれば離職しか選べなかった人が、テレワークという新たな選択肢を得て、なんとか会社に踏みとどまることができた結果と考えられます。
ところが、この流れは続きませんでした。2021年の離職者の数は上期(1月~6月)だけで5万7600人。これは、単純に2倍すると通年で過去最多となる数字です。コロナ禍でテレワークが増え、「仕事と介護の両立」がしやすくなったのではなかったのでしょうか?
■「介護離職増加の原因はテレワーク」と専門家
NPO法人「となりのかいご」の代表理事を務める川内潤さん(42)。“介護する家族による虐待を防ぐこと”を目的とした介護支援コンサルティングを行っています。

年間約600件の介護相談を受けている川内さんは、まもなく発表される2021年通年の介護・看護離職者の数が間違いなく過去最多になるだろうと考えています。そしてその原因はテレワークにある、と言い切ります。これまでに見てきた「テレワークが巻き起こした介護家族の悲劇」について聞きました。