「今のままだとどんどん金をつぎこむだけ」東京オリパラの会場めぐり問題も
東京オリンピック・パラリンピックのために建設された競技会場をめぐる費用についても、問題になっている。

小池百合子東京都知事(2019年)
「オリンピック・パラリンピックのムーブメントをレガシーとして残していく」
開催にあわせ、6つの競技会場が総額1375億円をかけて新たに建設されたのだが、大会後も、多額の維持費用がかかり続けている。

303億円をかけた「海の森水上競技場」では、年間1億6000万円の赤字になると試算されていたが(2017年公表資料より)、報道特集は、さらに維持費を押し上げる問題について報じていた。
膳場貴子キャスター(2021年9月18日放送)
「期間中だけでなく大会後もかかり続ける費用を検証します」
5.6キロにわたって設置された、黒い筒状の「消波装置」。

大会前に「消波装置」に大量の牡蠣が付着して沈んでしまい、波を消す効果が失われた。
都は2019年、1億4000万円をかけて付着していた牡蠣を取り除いたというのだ。

これは報道特集が新たに入手した、2023年度と2024年度の都の予算関係資料だ。「事務上の参考とするための内部資料」とされている。

2023年度の資料には「消波装置維持管理工事」という名目で、3億90万円が計上されていた。「消波装置の維持管理工事」とは何なのか。
6日、「海の森水上競技場」を再び尋ねると…
村瀬健介キャスター
「牡蠣などの貝が付着するということで、このように、消波装置にシートがかけれられています」

3年前に牡蠣が付着していた網目を覆う形で、白いカバーがかけられているのが分かる。次々と付着する牡蠣を取り除く費用を抑えるために、「消波装置」にカバーをかける工事が行われていたのだ。
表面にある網目に波を打ち消す効果があるとされるが、これを覆ってしまったことについて、消波装置の技術者は・・・
消波装置 技術者
「シート(カバー)で凹凸がなくなる。効率というか『消波能力』は落ちるのでは」
ーーカバーによって「消波機能」が落ちる。粗末な段取りのようにも見えるが…

消波装置 技術者
「『消波』を期待するのであればカバーは使うごとに外さないといけないと思う」
ところがこのカバーにも、牡蠣が付着するというのだ。
確かに「消波装置」のカバーに近づいてみると・・・

村瀬キャスター
「波消装置の端に牡蠣のようなものがついているのがわかります」

カバーに付着する牡蠣などを取り除くためなのか、番組が入手した今年度の予算関係資料には「消波装置清掃委託」という名目で1500万円が計上されている。
実は大会前から、東京オリンピックのために「海の森水上競技場」を新たに建設することについては、競技関係者から反対の声も出ていた。

埼玉県のボート競技関係者
「(海の森水上競技場は)まず一番最初に風の問題、それから海水。そういうことを考えるとあまり適していない」
村瀬キャスター
「具体的にどういう問題があるんですか?」
埼玉県のボート競技関係者
「横風で波が来ると返し波が来る。波消しの『消波装置』が必要になる」
この戸田漕艇場を会場にしていれば、これらの問題もなく、消波装置に関する費用も生じることはなかった。
小池都知事が大会をレガシーとすることについて関係者は・・・

埼玉県のボート競技関係者
「もう少しあの場所(海の森水上競技場)を考えて造ってもらえれば、レガシーとしては意味があったのではないかと思う。今のままで何とかしようとすると、どんどん金をつぎ込むだけになる」
海の森水上競技場の維持費をどう考えているのか。
都は取材に対し、カバーの設置に約1億5000万円かかったことを認めたうえで、こう回答した。

都の回答
「工夫により、維持管理費を年平均7,000万円に圧縮しました。今後、生物の付着状況などを踏まえ、維持作業の頻度を見直し(中略)令和6年度は清掃費として約2,000万円を見込んでいます」