1974年から続いた関東大震災の「追悼文」取りやめ

毎年9月1日の関東大震災の追悼式で、追悼文を取り止めた問題もある。
歴代の都知事は、東京都慰霊堂で営まれる大法要とは別に、隣で開催されている朝鮮人犠牲者の追悼式にも追悼文を送ってきた。

大災害の混乱の中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマを信じた人々によって数多くの朝鮮人が虐殺された。その数、数千人とみられる。
これまで、知事の追悼文には「わが国の歴史の中でも稀に見る、誠に痛ましい出来事」「不幸な出来事を二度と繰り返すことなく語り継いでいかなければ」などと記されてきた。

日朝協会東京連合会 宮川泰彦会長
「これが舛添さん、その前が猪瀬さん」

追悼式を主催してきた日朝協会によると、追悼文は美濃部知事時代の1974年から毎年送られてきたという。
小池都知事は、就任した最初の年は送ったものの、2017年からとりやめた。

小池百合子東京都知事(2017年)
「(大法要の方で)関東大震災で犠牲となった、すべての方々への追悼の意を表した」
その年から式典の様子は一変した。

朝鮮人虐殺を否定的にみる団体「そよ風」が追悼式の20メートル先で「死者数に根拠がない」「虐殺は嘘」などと主張する集会を新たにはじめたのだ。
2019年には「不逞朝鮮人によって家を焼かれた」などのヘイトスピーチも行われた。

小池都知事は、かつて、この団体の主催する講演会に講師として呼ばれていたこともある。
追悼式の実行委員長を務める宮川さんは、毎年知事に追悼文の再開を求める要請を続けてきた。

日朝協会東京都連合会 宮川泰彦会長
「都側の反応は担当の事務局しか出てこなくてきわめて事務的ですね。自然災害で亡くなった人、人の手によって命を奪われた人、その弔い方というのは違う」
追悼文を送らない理由について知事の回答は、毎年、判をおしたような内容だ。

小池百合子東京都知事(2021年)
「理由は、去年述べたことと変わっていない」
小池百合子東京都知事(2023年)
「この考えは引き続き変わらない」
日下部キャスター
「宮川さんは、追悼文を知事が出すことの意味ってなんだと思いますか」
日朝協会東京都連合会 宮川泰彦会長
「やはり自治体の長が、歴史的な事実、恥ずかしいことだったかもしれないけれど、それをきちんと認める。同じことを二度と絶対に繰り返させない。そのことを自治体の長の言葉として訴えていく。そうしたことを示す意味はある」