記者が現場からしゃべる、これがテレビのニュース
鈴木 それで、私はまあ、後で多分話が出ると思いますが、なんでそんなにいろんなことを知ってんですかっていわれるけれども、別に知ってるわけじゃないんです。海の映像があったら、今、映っている海の中にはどんな魚がいて、この海の色は四季折々どういうふうに変化して、と、そういうふうに、そういうものを事前に私は全部調べるんです。
隈部 はあ。
鈴木 映る雑草1本まで調べるんです。だから私は資料を全部読みこなせばどんな番組もそれで90%が終わりだと。演芸番組でも報道番組でも。後になって私、報道へ行って、記者さんたちといろいろ渡り合いますが、それもそうなんです。
ああ、鈴木健二は俺たちの原稿を読んでくれないなんつってたんですよ。で、私は、そうじゃない、あなたたちの原稿を一番読んでいるからこそ、こういう読み方をするんだっつって、何べんやったか分かんない。
そうやってテレビの一番基礎の研究を始めたんですね、誰もやらない分野を。それは、熊本で経験した、よく調べれば大学の先生までが興味を持ってくれるんだということからきているんです。
隈部 へえー。
鈴木 それで私は、これからは「ニュースをお伝え申し上げます」って時代じゃないと。今日は国会でこういうことがありましたって、茶の間で話をする時代なんだ。そしたら、女性向きの種もいっぱいあると。だから女性のアナウンサーにもニュースを担当させてほしいと。
それから出来るだけ、現場に近い記者が直接カメラに向かってしゃべってくれるようなシステムにしてくれないかとか言ったんです。そしたら記者がどっと来たですよ。俺たちはしゃべる訓練受けてないんだと。俺たちの役割は、取材して原稿書くことなんだと。
隈部 うん。
鈴木 それが古い、お前さんたちはっつって。そうじゃなくて、記者が現場からしゃべる。これがテレビのニュースなんだと。それで、記者とはもうさんざんやり合いました。女性を登用してください、記者は現場からしゃべってください。そういうことを主体にテレビのニュースってのは作ってくださいって。
隈部 うん。
鈴木 とにかく、ニュースはショーになりますと。ショーってなんだって言うから、今の朝の「おはよう日本」、ああいう形ですよ。ああいう形でニュースを伝えられるじゃないですか。
でも彼らは、ニュースというものは書いた原稿をアナウンサーが読む、それがニュースだって譲らないわけです。ご存じですかね、昔、報道の中に「報道」っていう連絡誌があったんです。私、その「報道」に、報道局はもっと頭ん中に酸素を注入しろ、それで新しい頭でもって、その新しい時代に対応してくれないかっていうふうな原稿を書いたんですよ。
隈部 うん。
鈴木 その印刷ができたんですが、それをですよ、報道局は部長さん以下全員、安全カミソリの刃を持ってきて、私の部分だけ全部切って配った、全員に。これを雑誌「報道」事件っていう。そこまで私は嫌われてたですね。