■最低賃金を上げると生産性が下がる皮肉

国際的にみると日本の賃金は低いと言われているが、最低賃金はどうなのか。イギリスとフランスは1500円台、米ロサンゼルス市は6.9%増加して2000円を超え、ドイツは増加率が14.8%と大幅に増加している。日本は3.3%増の961円と世界と比べると格差が顕著となっている。背景には最低賃金で働いている人が非常に多いことがある。

最低賃金の1.1 倍未満で働いている人の割合は、宿泊業・飲食サービス業が最も多く34.2%、卸売業・小売業が22.8%、生活関連サービス業・娯楽業が21%となっている。

ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
たとえばすごく生産性が高く賃金が高い産業があれば、宿泊などで働いている人がそこに移動するわけです。そうなっていないということは、日本全体で生産性が上がって賃金が高い分野が生まれていないし、人が移動しにくいし、移動するインセンティブがあまりないというような状況になっている。いろいろな問題が積み重なっているのがいまの日本の現状でしょう。

最低賃金と生産性のグラフを見ると、最低賃金は上がっているが企業の生産性があまり上がっていない。
ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
2010年以降、最低賃金が上がっていくときに資本金1億円以上の大きな企業はある程度生産性が上がったという姿は見えるのですが、それ以下のところは全然上がっていません。最低賃金を上げれば上げるほど生産性が下がっているという皮肉な結果にもなっているということです。
最低賃金だけで全体の賃金上昇という広がりができないということになると、打つ手はあるのか。
ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
これをやればということは難しいですが、例えば働こうということと社会設計の矛盾点が出てきているので、そういうものは変えなければいけません。マクロの視点で考えれば、業種で生産性が高いところを増やすための規制緩和も含め、セットで最低賃金の引き上げを考えるべきだと思います。もう一つ言えることは、データです。どういう業種で、どういう地域でうまくいっているのかということを踏まえたうえで、最低賃金のきめ細かな分析、議論というのが必要なのではないかと思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』 8月6日放送より)