「電気が来なければ…」輪島市 孤立集落は今

輪島市では一時、2800人以上が孤立した。当時、孤立していた集落は…。

竹中栄信さんは今、市街地の仮設住宅に暮らしている。田植えのために、一時的に戻って来ていたが…

住民・竹中栄信さん(79)
「5か月も過ぎようとしているのに、まだ電気が来ていない」
「田植えは終わっても、もみすり機とかは電気が来なければ、お米にすることができない」

竹中さんの集落では電気・水道がいまだに止まっていて、多くの住民が集落を出たという。

ーーこの地区、集落がまた元通りに戻るということについてはどう思いますか?

竹中さん
「厳しいな。『生活はできんから戻らん』って」

ーーそういう声があった?

竹中さん
「もう出てったもん、そう言って。『あと頼むね、すみませんねって』出ていきましたよ。悲しい」
「ここは不便であってもやっぱり、ここしか。私、やがて80歳ですけど(集落を)出たことないですからね」

なぜ「断水」は解消されない?

輪島市の隣、珠洲市も町の風景は、ほとんど変わっていない。

山本恵里伽キャスター
「瓦も落ちたままになっています。この建物も大きく、倒れています。道路は通れるようになっていますけど、瓦礫は積み上がったままの状態になっています」
「マンホールが私の身長くらい隆起しています。これも手つかずの状況ですね」

宝立町・鵜飼地区は揺れに加え、津波の被害にも見舞われた。傾いた電柱。亀裂の入った道路。多くのライフラインが被害を受けたが、特に深刻な影響が「水道」に出ている。

珠洲市では石川県内で最も多い、約1290戸で今も断水が続いている。(5月21日・石川県発表)

自治体による水道の復旧工事が進められているが、なぜ断水は解消されないのか。

自宅の隣にある車庫で暮らしている橋元泰博さん(83)と妻の公子さん(79)。橋元さんの自宅は柱や壁、天井が大きく壊れてしまい住める状態ではなくなってしまった。

橋元さんの宅地に繋がる水道管は、自治体が工事をしたにもかかわらず水道水が使えないままだという。橋元さんに水道の元栓をひねってもらうと、水が溢れ出てきた。

橋元さん
「漏れたでしょ。ここに水道管を繋いでいるが、外れてしまっている。だからここから台所へ水が行かないんです。ここで漏れてしまって」

自治体などが行う復旧工事は、配水管から宅地内にある止水栓まで。この工事は公費でまかなわれ、通水すれば、断水は解消したとみなされる。

しかし、橋元さんのように水道メーターよりも宅地側で漏水が起きている「宅地内漏水」は、所有者自ら工事業者に依頼する必要があり、費用は自己負担だ。

橋元さん
「(珠洲市の)業者に工事を頼むと『お宅は150番目とか200番目だから、しばらく待ってください』と」

珠洲市で宅地内漏水の修繕待ちは、約1700件にのぼるという。(5月8日・珠洲市長によると)

水道が使えないため、給水所に通うのが橋元さんの日課になった。車で往復20分かけ、80リットルの水を自宅に運ぶ。

橋元さん
「一番水が必要なのは洗濯ですね。風呂は近くの小学校の横に自衛隊が毎日風呂を沸かして入れてくれる」

ーー毎日辛くないですか?
橋元さん「慣れっこになったからね」

1日3往復もしなければならない日もある。

橋元さん「重いですよ、こんなのをトラックに・・・」
ーー重い…これを持ち歩くわけですか?

震災直後から隙間風や暑さをしのげない、車庫での暮らしを強いられている。

家電や布団など使えるものは自宅から運び出したが、生活再建の見通しは立たないという。

橋元さん
「復興・復旧なんて、夢の夢。何にも手がついてない。まず心の復興。大きい支援が欲しい。大きい支援があれば、そんな余裕が出てくる。でも今はそんな余裕なんてない」

橋元さん
「だんだんね、災害にあった地方のことが薄れてくる。だから見放されてる」