本棚の横から見える建造物が!?画面に映らないこだわり

照明のこだわりは、人に当てる明かりだけには留まらない。美術スタッフのインタビューでも紹介した、布プリンターを使用した窓外背景。ビルの窓以外を黒く印刷していることで、裏からライトを当てると夜景のように見せることができるのだが、これも明かりを当てているだけではない。「ただ明るくするだけだと写真感が拭えないので、赤、青、紫など、いろいろな色のライトがチェイス(前の光を追いかけるようなかたちで色が変わり続ける)という技法も使っています。そうすることで、揺れ動く街の明かりやネオンを表現できるんですよ」と、ここでもパッと見ただけではわからない細部へのこだわりを見せる。さらに、鈴木氏は遊び心も忘れない。「実は、明墨の部屋からは東京タワーが見えます。本棚の横から覗かないと見えないので映像に映ることはないのですが、しっかり東京タワーカラーになるよう照らしています。完全に僕の自己満足なんですけど(笑)」とお茶目なこだわりも披露してくれた。

ドラマでは実景で撮影するロケ映像もあるが、そのシーンでは外とのつながりを意識。「新橋の駅前を歩いてきて、そのままセットで作られている明墨法律事務所に入るシーンもありましたが、そのようにロケとスタジオのシーンが直結している時は、ロケ撮影時の天気も考慮しています。例えばロケ日が曇りだった場合、続くスタジオでのシーンの照明も青っぽく調整。天気の色を反映することで、映像が切り替わった時の違和感を減らすことができます」と、照明の当て方だけなく、色味がもたらす効果を披露してくれた。

鈴木氏は最後に、「シリアスな側面が多い作品なので、俳優さんのお芝居を明かりで邪魔しないことを一番大切にしています。台本を読んだだけでも作品の受け取り方はそれぞれ。スタッフ全員でシーン毎の心情やイメージを共有し、僕たちはその中で、みなさんが作り上げたものがより効果的に映像に映るよう、メリハリのある照明を作れるように日々努力しています」と、仕事への信念を誠実な表情で語ってくれた。

俳優陣の表現力が光る本作だが、照明はその芝居を、映像を通して視聴者に最大限届ける、まさに影の立役者。視聴者が映像から受け取る印象は、照明が大きく関係しているのだ。善と悪がせめぎ合う本作だからこそ、いつもと違った視点から“光と影”に注目してみるのも面白いかもしれない。