タブー視された洪水の歴史

洪水の脅威に常にさらされてきたオランダ。治水政策の転換点となったのが1800人以上の死者を出した1953年の「北海大洪水」です。中でも、被害が大きかったのが南西部・ゼーラント州でした。

記者
「ゼーラント州は約70年前、高潮による深刻な被害を受けました。その後、堤防はより高く造り変えられました」

この村には、“押し寄せる高波を住民たちが止水板を押さえて防いだ”という逸話がありますが、約30年前に記念碑が建てられるまで語られなかったといいます。

歴史家 ヨハン・シュトゥルムさん
「1953年の洪水災害はオランダの人々に大きな衝撃を与え、タブー視された。伝えなければならない、伝え続ければならないと」

また政府は、この大洪水を教訓に13もの巨大な開閉式の堤防などを整備しました。

しかし、温暖化による海面上昇という想定外の問題が浮上。堤防で“水を防ぐ”だけでなく、川の幅を広げたり、遊水地を作ったりと、“水を溜めて、安全に流す”水害対策へと転換しました。