“世界一危険な料理”「テナガダコ」漁師は小腹が減ると丸ごと?

世界遺産エリアでの漁は、漁業権を持つ地元の人たちだけに許されているのですが、面白いのは新安干潟のテナガダコ漁。ここのテナガダコは小ぶりで細長く、干潮になると泥の中に潜んでいます。

それをシャベルで一気呵成に掘り出して捕まえるという漁で、漁師さんたちは小腹が減ると、捕まえてまだ生きているテナガダコを丸ごと食べていました。

撮影スタッフも勧められて食べてみたのですが、食べ方にコツがあって、慣れないと吸盤付きのタコの脚が鼻の穴に入ってきたりして難儀したとのこと。味はやわらかくておいしかったそうです。
このように韓国のテナガダコは生食可能で、レストランでも「サンナクチ(生きたタコ)」という料理として出しています。ただ、まれに喉にタコが詰まって窒息死する人がいて、「吸盤が喉に吸い付いて詰まる」とか「世界一危険な料理」などという記述もネットでは散見します。おどり食いでタコを喉に詰まらせるのは多くは高齢者のようで、日本のお餅と似ているように思いました。

新安干潟のある海には1000以上の島々が浮かんでいます。川が運んだ土砂が島と島の間に堆積し、約11万ヘクタールもある広大な干潟が生まれました。さらに干潮時と満潮時の海水面の差が約6メートルもあり、それも大きな干潟となった理由です。干満差が大きいほど、引き潮のときに現れる浅瀬が広くなるからです。
同じ場所でありながら、刻一刻と景観が劇的に変化していく干潟。「ゲッボル:韓国の干潟」は、きわめてテレビ向きの映像が撮れる世界遺産です。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太