例えば、撮影したデータは、編集途中のファイルまで工程が分かるように残しておくよう求められました。今回は僕が担当したけれど、20年後に僕がいなくても、その時の新しい技術を使って作品を再現できる、という考え方なのです。

映像の表現領域として「SDR」と「HDR」というものがあります。HDRの方が、人間の見た目ぐらいに光のレンジが広がっているので、立体的に生々しく見える特徴があり、臨場感がある映像になります。同じ画であっても、処理とモニター環境を変えると見え方が違ってくるのです。

SDR
HDR

当時、近い将来にHDRで作品を観る環境が一般家庭にも来ると言われていました。その時に、映像や音声の編集が終了した状態の「完パケ」のデータしかなければ、それ以上新しい表現ができないんです。でも、大元のデータから作業できる環境を残しておけば、もう一度再現することができる。

良い作品は将来ずっと、何度でも見られていくからそのために備えるという考え方が既にあったのです。

『ポケットモンスター』からライブフィルムまで 挑戦し続ける

──キャリアを積んできた中で、印象深い作品は?