13年前にも津波 女川町の危機感

今年9月に再稼働が予定されている原発がある。宮城県の牡鹿半島に位置する東北電力・女川原発だ。
膳場貴子キャスター
「あちらに見えているのが女川原発のゲートなんですけど、女川原発と隣り合わせのこちらの集落で話を聞いてみますと、原発が事故を起こした際の避難計画については、不安を口にされる方が非常に多いです」
集落の区長は…

集落の区長
「もう逃げろと簡単に言われてもね。どこに逃げればいいの。歩くしかない」

東日本大震災で女川町は15m近い巨大津波に襲われ、壊滅的な被害を受けた。女川原発にも津波が到達し、非常用発電機2台が停止。また外部電源5系統のうち4系統まで停止したが、原子炉は辛うじて冷温停止した。

その後、策定された原発事故を想定した避難計画では、女川原発の周辺住民は約70キロ離れた栗原市に避難することになっている。
移動手段は、自家用車やバスが想定されていて、道路の寸断などで、車両での移動が難しい場合は船やヘリコプターで避難するとされている。
しかし、その場合でも、港やヘリポートまでは徒歩で移動しなければならない。
集落の区長
「電柱が倒れても歩くことはできるけど、がけ崩れはもう歩けないからね。船は津波が来ればもう駄目だから。桟橋が使えないから。前の地震でわかってるから」
原発の再稼働をめぐっては、3年前に周辺住民が東北電力を相手どり、差し止めを求める訴訟を起こした。

再稼働差し止め訴訟 原伸雄 原告団長
「破綻したような避難計画のもとでの再稼働はあり得ないんじゃないかということを強く思いますよね」
原さんら原告団が特に問題視するのは、住民が避難する際に、放射性物質の除染が必要か確認する検査場所についてだ。
原伸雄 原告団長
「大変な渋滞が発生して、検査場所へ必要な機材とか人員が派遣できない。検査場所に到達できんのかと、そんなことも色々な形で立証して、問題にしてきたんです」
さらに、今年1月の能登半島地震で道路が寸断され、多くの集落が孤立したことが原さんの危機感を強めた。
原伸雄 原告団長
「私どもが心配して問題提起してきたことが目の前で現実になった。避難計画というのが総崩れという状態が目の前で展開されたという感想ですね」
東北電力側はどう主張しているのか。取材中の2月29日、東北電力側の反論が原さんの弁護士から届いた。書面にはこう書いてあった。

「避難計画の不備について縷々主張するだけで、事故が発生する具体的危険については何ら主張立証を行っていないものであるから、控訴人らの主張が認められる余地はない」
膳場キャスター
「原さん達の主張は…」

原伸雄 原告団長
「全く論外だと。こういう言い方するんだね。しかし、驚くべき回答だ」
番組の取材に対し東北電力は、「係争中の訴訟に関わることで、詳細は差し控えるが、当社は引き続き避難計画の実効性向上に向けて、自治体とも連携しながら、事業者として出来る限り貢献していく」などとしている。