敗訴続くも…「命を守るのが裁判所」

現在、国内にある原子力発電所は、15か所33基(建設中3基)。
そのうち、東日本大震災後に設けられた新規制基準に適合した12基が再稼働している。

これまで5か所の原発について「運転差し止め」などを命じた司法判断が下されたが、審理中を除き、いずれも上級審などで覆った。
2014年、関西電力・大飯原発の「運転差し止め」を命じた福井地裁の元裁判長、樋口英明さん。

大飯原発の差し止めを命じた 樋口英明元裁判長(71)
「関西電力の主張は『大飯原発の敷地に限っては、強い地震は来ませんから安心してください』と。強い地震が来ても大丈夫だという主張ではないんです。今の規制基準は『将来、起きる地震の大きさと強さが予測できる』という立場に立っているんです。そこの根本のところがおかしいんじゃないかと」
それぞれの原発には、「耐えられる最大の揺れ」が設定されている。
大飯原発の場合、当時、最大で「700ガルまでの揺れに耐えられる」とされていたが…

樋口英明元裁判長
「700ガルを上回るような地震は、今回の能登半島地震を見てもわかるように、あの(能登半島)地震は2828ガルだったんですね。1000ガルの地震も、数多くあります。そういう意味から、極めて危険だということですね」
「設定された揺れを上回る地震」が起きる可能性を否定できない、という樋口さん。
建物は倒壊しなくても、停電や配管が壊れることで、「重大な事故が起きないとは言えない」と判断した。
ところが、ほとんどの裁判所は、原子力規制委員会にただ従い、原発がそれに適合しているのかだけを見ているという。

樋口英明元裁判長
「(控訴審では)規制基準に合格しているじゃないかと。それ以上はもう裁判所が、口出しすべきことじゃないと。裁判所とか、この法曹界の悪いところが出ていると思いますね。いわば『先例主義』なんですよね。根本は国民の命を守れるかどうか。耐震性が高いか低いか、素直に考えればそうなんだけど。裁判所の役割が分かっていないです。国民の命と生活を守るのが裁判所の役割です」