必要なのは「マニュアルを超えて判断をする覚悟」
指定された避難所ではないため、運営のマニュアルはなかった。だが、押し寄せる避難者とともにやるべきことが山のようにあふれてくる。「泥だらけだからタオルを貸してほしい」「お腹が痛いから薬はあるか」「体をふきたいからお湯を使わせて」…。次から次へと舞い込んでくる課題について即断即決の繰り返しだ。

「避難所は100あれば100通りの運営方法がある。ぶれないということですよ、その場に立った時に」
発災当初はとにかくスピードが命だった。平常時の「縦割り」の組織では決定までに時間がかかりすぎるため、目の前の課題を解決するための「役割」で動くように教職員らに責任を与え、事後報告でいいからその場で判断するよう求めた。

教室の振り分けも、避難者の状態を見極めて決断する。医療的ケアが必要な人や車いすの人は1階の教室、3人の妊婦は本部に一番近い畳のある更衣室、比較的元気な人は上の階の大部屋に―。
正解かどうかなんてわからない。あるのは「マニュアルを超えてその場で判断する覚悟」だけだった。

「追い詰められた人が『早く出てってほしいでしょ?私たち迷惑でしょ?』という言葉を投げかけます。だから『困ったときはお互い様だよ』と」
おじの亡骸や生徒の死を思い、生き残った人が生き延びるための避難所運営に努めた。