政倫審で明らかにならなかった「4つの問題点」
衆議院・政治倫理審査会では、安倍元総理から生前、派閥から現金での還付(キックバック)を止めるよう指示があったものの、安倍氏の死後それが復活したことなどが明らかになった。一方で、明らかにならなかった点も多かった。

①派閥からの還付金(キックバック)の不記載は誰がいつから行ったか
安倍派幹部4人が一様に「承知していない」と答え、西村前経産大臣は「還付の処理は歴代会長と事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことで、会長以外の幹部が関与することはなかった」と自身の関与を否定している。
安倍派の座長・塩谷元文科大臣は「二十数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」と述べ、野党側は改めて当時会長だった森元総理の聴取が必要だと訴えた。
しかし岸田総理は、2月26日の衆院・予算委員会でこれまでの自民党の聞き取りで「森氏の具体的な関与を指摘する発言はなかった」と述べ、聴取の必要性がない考えを示した。
②安倍氏がキックバック廃止を指示した後、いつ誰の指示で再開したか
西村氏と塩谷氏の答弁に微妙な食い違いが生じている。西村氏は安倍氏が亡くなったあとのおととし8月の幹部会で「結論は出なかった」としたが、その後答弁した塩谷氏は「今年に限っては(キックバックを)継続するのはしょうがないかなというような話し合いがされた」と答弁している。
③②の際に安倍派幹部らに「違法性の認識」があったのか
「違法性の認識について」は、今回の政倫審に事務総長経験者にもかかわらず唯一“呼ばれなかった”下村元文科大臣が従来のキックバックに代わる代替案として次のように話している。
「還付(=キックバック)については個人の資金集めパーティーのところに上乗せしてですね、それでそこで収支報告書で“合法的”な形で出すということもあるのではないかという案もあったと思います」(1月31日会見)
この案は、のちに西村氏が実際に行ったものと本人の証言により発覚する。下村氏が「合法的」と証言しているところに、当時安倍派幹部たちが「違法性を認識していた」のではないかと強く推察できる。
政倫審での下村氏の出席が求められるが、下村氏が森元総理と折り合いが悪いことから自民党幹部は「下村さんは森元総理に相当恨みを持ってるから何を喋るか分からない」と警戒している。
④キックバックは政治団体への寄付か 議員個人に対する寄付か
「脱税」につながるかどうかに関わる問題だ。自民党が行ったアンケート、聞き取り調査は「政治団体の収支報告書の記載漏れ」にしか尋ねられていない。このキックバックが仮に議員個人に対する寄付であれば課税対象で脱税となる。
この点を3月6日野党から指摘された岸田総理は「アンケート調査以前に、検察の捜査で厳正に処理が行われた。その全てが議員側政治団体への寄附であると認定されたものであり、個人に対する政治団体からの寄附で立件されたものは把握されていない」として、納税を促す考えがないことを強調している。
ただ世論調査では90%の人が「国税庁が調査すべきだ」と回答している。
