大分県にある特別支援学校で、女子生徒が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐり遺族が県を訴えた裁判で、大分地裁は1日、県に660万円の支払いを命じました。

この裁判は2016年、別府市の県立南石垣支援学校で高等部3年の林郁香さん(当時17)が給食をのどに詰まらせて死亡した事故をめぐるものです。遺族は郁香さんに重度の知的障害があったにもかかわらず、食事中の見守りを怠ったことや適切な救命措置が取られなかったとして、県や当時の校長ら4人におよそ3700万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

その後、当時の校長ら4人とは遺族が主張する事実関係を認め、謝罪したことで去年6月和解金なしで和解が成立しましたが、大分県に対してはこれまでの姿勢について「不信感がぬぐえない」として和解を受け入れませんでした。

大分地裁で開かれた1日の判決で石村智裁判長は「特別支援学校ではそれぞれの児童・生徒の特性に合わせて指導する安全配慮義務があった」と指摘。そのうえで今回の事故では「郁香さんのそばを業務上離れる理由があったとしても周囲に声かけするのは容易かつ可能だったのにそれをせず、食事中の郁香さんを一人残したのは見守り義務に反する」として、県におよそ660万円の損害賠償を命じました。

母・香織さん(判決後の会見)

判決の後、遺族側は会見を開き、母親の香織さんは「郁香には障害があって食べることにリスクがあった。先生が離れたことでリスクが生じ、見守りをするべきだったと裁判所に認めてもらえた。今後、障害者の食事のリスクに対して、世の中の意識がもっと高まるようにこれからがんばっていきたい」と話しました。

判決を受けて佐藤樹一郎知事は1日の定例会見で、「亡くなられた方に対して、改めて心からご冥福を申し上げたい。事故後、教育委員会は特に障害がある人の児童生徒の食事が安全に行われるように手引きを作るなど、安全確保ができる取り組みをさらに強化をしていると聞いている。何より二度とこのような事故が起きないように安全確保に万全を期することが重要なので、そのように教育委員会に指示をしている。判決については裁判のプロセスなので、しっかりと検討したうえで教育委員会から話を聞いて、今後の対応を考えていきたい」と述べました。