課題は国内雇用の7割を占める、中小企業の賃上げか
日比キャスター:
日経平均株価が最高値に迫っていると言われても、生活の安心感はまったくないんですけどもね。
生活への恩恵はどうかと聞いてみたところ、こうした声も聞こえてきました。

60代 自営業
「実感としては株だけが勝手に上がっている感じ。日常生活の中では全くなんの変化もない。物価高だけが続いている」
40代 会社員
「値上げばかりで自分自身の生活は賃金も上がってないし、良くなっている実感はない」

ただ、今後の賃上げの可能性について、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介首席エコノミストによれば「業績がいい半導体や情報技術(生成AI)などの大手企業を中心に賃上げの傾向か」ということですが、大手だけではないわけですよね。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
そこがポイントで、我々が社会的によくなるためには、賃金を上げてもらわないといけない。
確かに労務行政研究所によると、プライム上場企業は平均で2023年、3.7%上がっている。つまり業績がいいところは上がっていていいんですけども、ポイントは日本商工会議所によると、日本の雇用の約7割が中小企業。この中小企業がなかなか、自分たちの商品やサービスの価格を上げることが難しい。
だから賃金も上げられないというジレンマを感じていらっしゃる企業がすごく多いということを、我々は忘れてはいけないですね。
井上キャスター:
日本商工会議所が同じく1月に行った調査では、2024年、中小企業のなかで賃上げを予定していると答えたのは6割ぐらいです。そうすると、2023年から上がっています。
ですから、いいサイクルが回っていく。中小企業などが身を削ることがないように、しっかりと商品価格に原材料高などを転嫁できる、いいインフレにどう結びつくか。ここ、すごく正念場だと思うんですね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
それと、あとどのぐらいの期間でこれができるかどうかですよね。これだけ、ある意味、また株価が上がっている。調子がいい会社も中にはあるなかで、それが5年、10年と続くかどうかはわからないですよね。
これが毎年少しずつでもいいから、少なくとも物価指数を超えるぐらいが一番理想なんですけども、それぐらいがないと、社会としても生活の質が上がっていかないわけですよね。
井上キャスター:
元総理の安倍さんもずっと話していたのが、トリクルダウンでしたっけ。その企業が動けるのは、まずいい。いいけれども、それが賃金が上がるところまですぐいかない。そこが日本は長いし、それがなかなか実現できなかったから、我々もずっと企業だけ儲けるという。
でも、企業が儲けるのは大切で、それをどう早く賃金に転嫁できるか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
賃金と税制ですよね。税制をどうやって考えるのか。もちろん個人の所得もそうですけれども、そういうのも所得に最終的には響いてくるものですから、それも合わせてやらないと、なかなか簡単ではないですよね。
井上キャスター:
具体的に、どういったものが必要だと思いますか?
ハロルド・ジョージ・メイさん:
たとえば中小企業の税制を緩和するとか、あるいは補助金を出すとか、今でも所得に合わせてやってますけれども、抜本的に考え直すとか、そういうことがいろいろできると思いますね。