ニューヨークのAIブームは巨額の投資を呼び込み、オフィスの賃貸契約も急増している。しかし、キャリアを始めようとする若者には、ほとんど恩恵が及んでいない。パートナーシップ・フォー・ニューヨーク・シティーの報告書で明らかになった。

AI企業が2026年上半期に市内で借りたオフィスの面積は20万平方メートルを超え、2025年通年の2倍以上に達した。AIを手がける新興企業による2025年のベンチャー資金調達額も、過去最高の167億ドル(約2兆6000億円)に上った。2日に発表された報告書によると、地域別ではサンフランシスコ・ベイエリアに次ぐ規模だった。

その一方で、若者を取り巻く雇用環境は一段と厳しくなっている。昨年、市内の民間部門の雇用増は3万8000人にとどまり、前年の半分だった。さらに、企業の採用は経験豊富な人材にますます集中しているという。

ニューヨークで働く人々

エコノミストは、エントリーレベルの採用が減っている背景に、研修や指導を難しくするリモートワークの普及など、複数の要因があるとみている。ただ、AIも一因となっているようだ。2022年にChatGPTが公開されて以降、AIによる自動化の影響を受けやすい職種で、エントリーレベルの求人が特に大きく減った。デザイン・メディア・執筆分野では41%、事務職では31%、経営管理では27%、金融では23%減少した。一方、AIスキルを求めるエントリーレベルの求人は55%増えた。

パートナーシップ・フォー・ニューヨーク・シティーのスティーブ・フロップ最高経営責任者(CEO)は「エントリーレベルの職も住宅も見つからない状況が続けば、経済格差はさらに深刻になりかねない」と述べた。同団体は市内の銀行、メディア企業、投資会社、不動産会社、法律事務所などの幹部300人余りで構成される。同氏は「この傾向が長期化すれば、地域レベルでK字型経済の二極化がさらに進むことになる」と続けた。

同氏によると、AI企業のオフィス賃貸契約は、他社が結ぶ契約より期間が短いという。「AI企業は現時点では、必ずしもニューヨークで雇用を生み出しているわけではない」と同氏は指摘した。

AIは新たな成長時代をもたらすのか、それとも長年ニューヨーク経済を支えてきたホワイトカラーの雇用を奪うのか。今回の調査結果は、この議論をめぐる経済の実態をいち早く示している。

来週、ニューヨーク市議会は大手AI企業の代表を招いて公聴会を開く。AIの安全性が懸念されるなか、どのような安全策を講じるべきかを議論する。今回の報告書に先立ち、ニューヨーク市のマーク・レビン会計監査官は投稿で、AIがけん引する株式市場の活況に警鐘を鳴らしていた。同氏は、株価が急落した場合にニューヨーク市が大きな打撃を受けかねないという「深刻な脆弱(ぜいじゃく)性」を抱えていると指摘した。

原題:NYC’s AI Office Boom Is Bust for Young Job Hunters, Report Finds(抜粋)

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