(ブルームバーグ):群馬県にある美野原カントリークラブ(中之条町)には、森林の間を縫うようにフェアウエーが続いている。しかし、数年後にはこの光景が何列にも並ぶ太陽光パネルの下に姿を消す。
太陽光発電施設を開発する上里建設(埼玉県本庄市)が2025年に取得した同ゴルフ場は、日本で広がりつつあるゴルフ場跡地のエネルギー利用を象徴するプロジェクトの一つだ。
政府は40年度の発電電力量に占める太陽光の割合を23-29%程度と見込む。2023年度は9.8%だった。一方、国土の多くを山地が占める日本では、大規模な太陽光発電(メガソーラー)に適した土地の確保が難しい。ゴルフ場が今では新たな受け皿になっている。
ブルームバーグNEFのデータによると、出力0.9メガワット以上の国内メガソーラーの設備容量の約9%をゴルフ場跡地の施設が占める。岡山県美作市にある国内最大級のメガソーラーも、かつてのフェアウエーが利用されている。
太陽光発電は、政府の支援策を追い風に拡大してきた。11年の福島原子力発電所事故後、原発の停止が相次ぐ中、政府は12年に「固定価格買取制度(FIT)」を導入。発電事業者の採算を支える仕組みによって普及が進んだ。
だが、15年をピークに太陽光発電設備の導入ペースは鈍化し、FITによる支援も縮小してきた。高市早苗首相も、太陽光発電への支援制度を見直す方針を示すなど、大規模施設を取り巻く事業環境は厳しくなってきた。
太陽光発電の拡大を阻む壁の一つが建設用地の確保だ。九州大学のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所のアンドリュー・チャップマン准教授によると、メガソーラーには十分な日照に加え、送電網に接続でき、住宅地から適度に離れた土地が必要となる。多くのゴルフ場はこうした条件を満たしている。
「平たんで傾斜も緩く、山地でないゴルフ場ならよい買い物だ」とチャップマン氏は指摘。「特に地方ではとても合理的な選択だ」と述べた。
転用を後押しする事情はゴルフ場にもある。80年代の好景気を背景にゴルフ場建設が相次いだが、その後、ゴルフ人口は長期的に減少。人口減少が進む地方では経営環境も厳しい。上里建設の戸矢大輔代表取締役によると、美野原カントリークラブも赤字経営だ。
ブルームバーグの試算では、国内で計画・建設中の太陽光発電事業のうち、ゴルフ場跡地を利用する事業の発電容量は少なくとも1ギガワットに上り、全体の約1割を占める。
美野原カントリーもその一つだ。上里建設は同ゴルフ場に出力152メガワットの太陽光パネルを設置する予定で、実現すれば、計画中の太陽光発電事業として最大級となる。環境への影響評価などの手続きに最長4年かかることもあり、同社は着工に合わせてゴルフ場を閉鎖する方針だ。
もっとも、ゴルフ場の転用だけで日本のエネルギー問題が解決するわけではない。戸矢氏は、国内のゴルフ場をすべて太陽光発電所に変えても、必要な電力には到底届かないとみる。
それでも戸矢氏は、エネルギーの多くを海外に依存する日本にとって、自国で確保する取り組みの必要性は変わらないと指摘。森林伐採への規制や住民の反対で新たな適地を見つけるのが厳しくなる中、「ゴルフ場でやるしかないんじゃないか」と語った。
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