(ブルームバーグ):世界最大の自動車市場である中国は長年、国内の過剰な生産能力を抑えるため業界再編を図ってきたが、これまでの取り組みはいずれも頓挫していた。
しかし、広州汽車集団は14日遅く、中国第一汽車集団(FAWグループ)が保有する特定されていない自動車製造合弁会社の持ち分を取得する計画を発表した。対価として自社株をFAW向けに発行する。
両社はいずれも中国でトヨタ車を生産していることから、アナリストらは国有企業2社がそれぞれの合弁事業を統合する公算が大きいと分析。今回の合意は、自動車の製造過剰という問題に対処する方法を中国がついに見いだした可能性を示している。
競い合う地方政府がそれぞれ支援する自動車メーカー同士を強引に統合させるという過去に失敗した戦略ではなく、中国は外資との合弁事業を再編の対象にしているもようだ。
この方法なら、生産削減を国内の利害関係者が受け入れやすくなる。国有企業はいずれも独立性を維持しながら、生産能力を削減できる。
S&Pグローバル・レーティングの香港在勤クレジットアナリスト、クレア・ユアン氏は15日公表の調査リポートで、「今回の取引は中国自動車業界における国有企業統合の先例となり、より踏み込んだ国有企業統合に向けた重要な試金石となる可能性がある」と指摘し、「FAWと広州汽車の取引は、地域をまたぐ国有企業統合が実現可能であることを示している」との見方を示した。
S&Pによると、国有企業の統合は雇用懸念や地方保護などの問題から、歴史的に困難だった。香港取引所に提出された証券資料から分かるのは、中国東北部の長春市に本拠を置く非公開企業のFAWが、中国南部の広東省に本拠を置く広州汽車の2位株主になるということだ。
広州汽車とFAW、トヨタ自動車は、発表内容以上のコメントを控えたか、問い合わせに回答しなかった。
詳細が明らかになっていないにもかかわらず、投資家は今回の動きを好感した。15日の香港市場では、広州汽車の株価が一時16%上昇した。終値は2.6%高だった。
中国自動車業界では、数年前から業界再編の機運が高まっている。中国が電気自動車(EV)への移行を推進する中、数十社の新規参入企業がその流れを捉えようと工場を建設してきたためだ。
上海の蓋世汽車研究院がまとめた最新データによれば、中国は現在、年5500万台余りの自動車を生産できる能力を抱えている。
しかし、中国乗用車協会(CPCA)によると、昨年の国内販売台数はその半分にも満たず、少ない買い手を多過ぎる自動車が奪い合う状況となっている。余剰分の一部は海外市場に流れ、中国自動車工業協会(CAAM)のデータは、輸出台数が21%増の700万台超となったことを示している。これが貿易摩擦を一段と激化させている。
自動車の過剰生産は国内の業界収益にも打撃を与えている。中国の自動車メーカー同士が値下げ競争を余儀なくされているためだ。政府統計によれば、業界の利益は今年1-6月(上期)に20%減少した。比亜迪(BYD)など国内大手でさえ中国で利益を上げるのに苦しんでおり、輸出拡大を迫られている。
一方、トヨタなどの海外ブランドは中国ブランドが次々と投入する新型車に押され、世界最大の自動車メーカーであるトヨタも、中国で7月の販売台数が24%減少し、6カ月連続の前年割れとなった。
中国の国有自動車メーカーを単純に統合しようとしたこれまでの試みは不調に終わっている。東風汽車集団と重慶長安汽車はその典型だ。協議が昨年行われたものの、両社はそれぞれ独立を貫いた。
だが、広州汽車を巡る今回の取引は、長年の問題に対処する新たなひな型となり得る。こうした動きが他の合弁事業にも広がれば、その可能性は高まる。
自動車合弁の多くは、外国の自動車メーカーが中国で工場を建設する際、現地企業との提携を義務付けられていた時代に設立された。しかし、中国は2019年、外国企業による自動車生産施設の完全所有を認め始めた。
海外ブランドにとって、業界の生産削減のしわ寄せを受けることは歓迎できないかもしれないが、販売台数を犠牲にすることで、悪化した利益率の安定化につながることも考えられる。バーンスタインのアナリスト、ユーニス・リー氏は、「中国自動車業界全体で、より広範な再編の波が始まる兆しとなるかもしれない」と見込んでいる。
原題:China Signals It’s Finally Starting to Tackle Glut in Car Market(抜粋)
--取材協力:高橋ニコラス.
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