(ブルームバーグ):ウォール街が直面する難題は今週、さらに積み上がった。原油価格が1バレル=100ドルを突破し、インフレ圧力も根強く残る。債券市場では売り圧力が収まらず、ベッセント米財務長官に追加の政策対応を迫るかのような展開となった。
それでもウォール街は動じず、2026年の投資戦略を維持した。AIがけん引する企業利益の急拡大と底堅い経済成長が、エネルギー高と金利上昇の打撃を吸収できるとの見方に賭けている。11日発表されたインフレ指標を受け、米金融当局が来週利上げに踏み切るとの観測が強まったにもかかわらず、株価は上昇した。
ただ、テクノロジーブームを支える工場やデータセンター、電力インフラには巨額の資本が必要で、その資本コストは上昇する一方だ。
上場投資信託(ETF)への資金動向からは、投資家がこうした状況にどう対応しているかがうかがえる。AIやインフラなど、投資拡大の恩恵を受ける分野には引き続き資金が流入している。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、テーマ型ETFだけで今年約560億ドル(約8兆6000億円)の資金を集めた。今月に入ってからは、インフラ関連ファンドに6億ドル超、AI関連に約3億ドル、農業関連にさらに2億5000万ドルが流入した。
こうした中、債券市場は反旗を翻している。米財務省は残存10-20年の国債を最大60億ドル買い戻すと発表。それでも利回りは上昇し、10年債利回りは5%目前まで迫った。
そして、11日発表された8月の米消費者物価指数(CPI)では、食品とエネルギーを除くコアCPIが前月比0.3%上昇し、エコノミスト予想を上回った。これを受け、米金融当局が来週利上げに動くとの見方が強まり、年末までに政策金利をもう一段引き上げる可能性も高まった。
エドワード・ジョーンズの投資戦略部門シニア・グローバル・ストラテジスト、アンジェロ・クルカファス氏は「債券利回りと原油価格の上昇という二重の逆風が市場の底堅さを試しているが、株式は主要な支えを失っていない。それは急速に拡大する企業利益だ」と指摘。「ここから得られる教訓は、利回り上昇だけでは成長分野への投資を手じまう確かなシグナルにはならないということだ」と話す。
こうした要因が重なる局面について、過去の事例から得られる手がかりは限られている。ジェフリーズのスティーブン・デサンクティス氏によると、約30年のキャリアで原油価格と利回りが現在と同程度の高水準に達したのは、ほかに1度しかない。ただ、同氏の試算では、両者がマクロ経済環境の重しとなった局面でも、その後数カ月の株式相場は比較的堅調に推移する傾向があり、小型株が相対的に好調となることもあった。
投資家は答えが出るのを待ってはいない。米国のETFだけで今年すでに1.3兆ドル超の資金が流入しており、年末まで約3カ月を残す中、株式の強気基調が続いていることを背景に、年間流入額は過去最高を更新する勢いだ。
特に大きな資金が向かっているのは、引き続き投資ブームの恩恵を受ける分野だ。AIをテーマとするETFには今年約60億ドルが流入し、インフラ関連には190億ドル超が流れ込んだ。インフラ関連への資金流入額は、BIが追跡する約36のテーマ別カテゴリーの中で最大となっている。

BIのアナリスト、ジェシカ・リン氏によれば、AI関連の設備整備とインフラ投資は強力なけん引役となりつつあり、テーマ投資は補完的な位置付けというより、ポートフォリオの中核的な配分先としての性格を強め始めている。
ブラックロック・インベストメント・インスティテュートも、同様の投資姿勢を強めている。ウェイ・リ氏らストラテジストは、AI関連設備の整備が加速する中、株式のオーバーウエートを維持し、電力、半導体、データセンターなど供給のボトルネックとなっている分野に注目することを推奨している。また、インフレへの備えとして実物資産に連動する投資対象も選好している。
だからといって、株式相場が今週の逆風を無傷で乗り切ったわけではない。S&P500種株価指数は11日に上昇したものの週間では下落し、ナスダック100指数も週間で0.6%安となった。
今のところ、企業利益の拡大が、債券市場や地政学を巡る逆風を投資家が許容する理由となっている。ここ数週間は米企業の利益予想を引き下げるアナリストより引き上げるアナリストの方が多く、上方修正が優勢な期間は過去5年で最長となっている。
エンパワーのチーフ投資ストラテジスト、マルタ・ノートン氏は「今のところ、企業利益という暖かい毛布に包まれ、心地よく過ごせている」と指摘。「ただ、より長期的には、企業利益に何らかの問題が生じれば、他のさまざまなリスクがより強く意識されるようになると思う」と述べた。
原題:AI-Obsessed Wall Street Pours Billions Into Inflation-Era Bets(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.