孤独感は、特定の属性や一部の人だけに限られる問題ではない。
内閣府「令和6年 人々のつながりに関する基礎調査結果」(以下、「内閣府調査」とする)では、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は4.3%であり、「時々ある」15.4%、「たまにある」19.6%と続き、少なくとも時折は孤独を感じる人が39.3%に達する。
このうち「しばしばある・常にある」と「時々ある」の合計は19.7%と約2割に達しており、孤独感は、深刻な状態にある人だけでなく、日常の中で繰り返し感じる人を含む幅広い問題である。
孤独・孤立対策を考える際には、外出の有無、人と接触する機会、気軽に話せる関係を分けて捉える必要がある。外出は他者と接する入口となるが、外へ出ることと会話が生じることは同じではない。また、短い会話であっても、同じ場所で繰り返されれば、顔見知りや継続的な接点へ発展する可能性がある。
本稿では、内閣府調査のクロス集計から、外出頻度、同居していない家族や友人と直接会って話す頻度、気軽に話せる相手の有無と孤独感の関係を比較する。次に、生活圏にある日常的な場の一例として居酒屋を取り上げ、立ち飲み屋を対象とした既存調査から、会話や知り合いの形成が実際に生じていることを確認する。その際、立ち飲み屋で確認された特徴のうち、飲食、酒、共通の話題、店員・店主とのやりとり、再来店といった立ち飲み以外の居酒屋にも共通し得る要素に着目し、居酒屋が人とのゆるやかな接点を支え得る場として持つ意味についても考える。そのうえで、孤独感を考える際には「外出の量」だけでなく、「会話が生まれること」「接点が繰り返されること」「気軽に話せる関係へつながること」をどのように捉えるべきかを考察する。
孤独感と日常的な交流の関係
孤独感の現状
内閣府調査によると、回答分布では、「ほとんどない」が40.6%、「決してない」が18.4%であり、両者を合わせると58.9%を占める。一方、「たまにある」以上も39.3%に上り、そのうち19.7%は「時々ある」以上と回答している。
孤独感は、あるかないかに単純に二分できるものではなく、感じる頻度や強さは人によって幅がある。
したがって、孤独感を感じている人への支援は、既に強い孤独感を感じている段階に加えて、孤独感が強まる前の段階においても、日常的な接点が細くならないようにする視点も必要となる。

外出頻度と孤独感
次に、内閣府調査の外出頻度別集計をみると、孤独感が強いと回答(「しばしばある・常にある」と「時々ある」の合計)した者は、週5日以上外出する人で18.2%、週3~4日程度で18.5%、週1~2日程度で20.6%であった。
これに対し、週1日未満では28.4%、外出しない人では35.4%に上る。 週1日未満になると孤独感の強い回答が増え、外出しない人では週5日以上外出する人より17.2ポイント高い。
一方、孤独感が少ないと回答(「ほとんどない」と「決してない」の合計)した者は、週5日以上外出する人で62.2%であるのに対し、外出しない人では46.4%にとどまる。外出頻度は、他者や地域の場所に接する機会の量を表す一つの指標である。
特に外出が週1日未満となる層では、日常の接点そのものが限られやすく、孤独感の分布が強い側へ移っている。

直接会って話す頻度と孤独感
続いて、内閣府調査の同居していない家族や友人と直接会って話す頻度別集計をみると、孤独感が強い(「しばしばある・常にある」と「時々ある」の合計)と回答した者は、週4~5回以上で12.5%、週2~3回程度で13.4%、週1回程度で17.6%、2週間に1回程度で17.7%、月1回程度で18.7%、月1回未満で23.5%、全くない人では36.3%となっている。 週4~5回以上の人と全くない人の差は23.8ポイントであり、外出頻度でみた17.2ポイントの差より大きい。
また、「ほとんどない」と「決してない」の合計は、週4~5回以上では70.4%であるのに対し、全くない人では44.1%である。外出は人と接する可能性を広げるが、その機会が実際の会話に結びついているかによっても孤独感の分布は異なる。外へ出ることに加え、誰かと言葉を交わすことが日常の接点として重要であることがうかがえる。

気軽に話せる相手の有無と孤独感
また、内閣府調査の気軽に話せる相手の有無別集計をみると、気軽に話せる相手がいる者で孤独感が強い(「しばしばある・常にある」と「時々ある」の合計)と回答した者は16.8%であるのに対し、気軽に話せる相手がいない人では55.7%に達する。
なかでも、気軽に話せる相手がいる者について、「しばしばある・常にある」は、わずか2.7%であるのに対し、気軽に話せる相手がいない人では24.5%であり、21.8ポイントの差がある。 気軽に話せる相手がいない人の約4人に1人が、孤独をしばしば、または常に感じている。
反対に、「ほとんどない」と「決してない」の合計は、相手がいる人では62.2%であるのに対し、いない人では21.8%であり、差は40.4ポイントに及ぶ。
外出や対面で話す頻度は接触の機会を示す一方、気軽に話せる相手の有無は、日常の出来事を言葉にできる関係が身近にあるかを表している。接点が単発で終わらず、継続的に話せる関係があるかどうかまで捉える必要がある。

孤独感と日常的なつながり
三つのクロス集計には、共通した傾向がみられる。外出する機会が少ない人、同居していない家族や友人と直接会って話す機会が少ない人、気軽に話せる相手がいない人ほど、孤独感の強い回答の割合が高い。
「しばしばある・常にある」と「時々ある」を合計した割合について、それぞれ最も差の大きいカテゴリー間を比べると、外出頻度では17.2ポイント、直接会って話す頻度では23.8ポイント、気軽に話せる相手の有無では38.9ポイントの差がある。とりわけ、気軽に話せる相手がいるかどうかによる差が大きい。
この比較から注目されるのは、外出の頻度だけでなく、外出した先で実際に人と話す機会があるか、さらに日頃から気軽に話せる相手がいるかという点で、孤独感により大きな違いがみられることである。外出は人と接するきっかけになり得るが、外へ出ること自体が交流を意味するわけではない。
誰かと顔を合わせて言葉を交わし、そのような接点が繰り返されることで、日常の中に「話せる相手」が生まれていく。孤独感を考える際には、外出の回数だけでなく、そこでどのような交流が生じているかまで捉えることが重要である。
そのため、孤独・孤立対策においては、外出や社会参加の機会を増やすことに加え、その先でどのような接点が生まれているかを見る必要がある。こうした観点から、本稿では、生活圏にある日常的な場の一例として居酒屋を取り上げる。
次章では立ち飲み屋の既存調査から居酒屋で実際に生じている交流を確認し、その特徴をもとに日常的な接点が持つ意味を考える。