ベッセント米財務長官は、自分に反対する投資家に対し、「やけどをすることになる」と度々警告を発した。

彼らが原油価格をつり上げるようと、円に対する売り圧力を強めようと、最も重要な米国債利回りを押し上げようと、それは大きな間違いだとベッセント財務長官は主張してきた。投資家が持たない政策方針の重要情報という武器を携える自分が、トレードの反対側に立っているからだ。

元ヘッジファンドトレーダーのベッセント氏は、ゲーム理論の専門用語で「情報の非対称性」と呼ばれる言葉に言及するのが好きだ。過去3週間だけで少なくとも4回、公の場で口にしており、8日には「そうしたいなら私に反対する方向に賭けてみてはどうか」と為替トレーダーを挑発した。

日米当局が為替市場で協調介入に動いた円相場にその兆しはまだないが、少なくとも債券市場と原油市場で、投資家はその方向に動き始めた。

ベッセント財務長官は、11月の重要な中間選挙を控え、米国民の家計の安定に極めて重要な二つの市場に対し口先介入を開始した。しかし市場は逆らう動きを見せてきた。

国際原油の指標価格は1バレル=100ドルを上回る水準に急騰し、ガソリン小売価格を押し上げた。米財務省は先月、住宅ローンなど借入金利の基準となる米10年国債利回りの押し下げに向け、長期国債の買い戻し上限額を2倍以上に増額すると発表したが、逆に米国債への売り圧力は続き、10年国債利回りは3年ぶり高水準の4.85%に達した。

原油・債券市場で売りが先行する現状は、トランプ大統領の意向を反映したベッセント財務長官のアプローチがはらむ危険を浮き彫りにする。

口頭での介入が効力を発揮するのは、トレーダーが「市場を圧倒し続ける十分強力な措置が裏付けとして存在する」と信じる間だけだ。国債利回りと原油価格の恐らく最も重要な押し上げ要因、米財政赤字とイラン戦争に対し、ベッセント氏の影響力は限られる。

ポトマック・リバー・キャピタルの創業者で最高投資責任者(CIO)のマーク・スピンデル氏は「彼のブラフ(はったり)を市場は見抜いた」と指摘。巨額の連邦財政赤字に加え、 米連邦準備制度のインフレ抑制能力への不安が、財務長官の対応に影を落としており、「ベッセント氏が威勢のいい発言をしたところで、それら全ては市場に一層重くのしかかる問題だ」と見解を示した。

ジョージ・W・ブッシュ政権時代に財務省当局者として働き、ビーコン・ポリシー・アドバイザーズのマネジングパートナーを勤めるスティーブン・マイロー氏によれば、ベッセント財務長官の最近のレトリックは、戦争が長期化する状況でもイランに対する勝利が目前だと繰り返すトランプ氏のスタイルをほうふつとさせる。

財務長官に逆らう市場の動きが続けば、リスクになりかねず、「市場は弱々しいと見なされる人物を望んでいないが、芝居がかった大げさな振る舞いをする人物も望まない」と同氏は分析した。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントのマルチアセットソリューションズチームの最高投資責任者(CIO)ネイサン・トホーフト氏は「自分に逆らう過密なポジションを取る前に投資家に考えさせるだけの十分な信頼性、政策手段、市場への影響力」をベッセント氏はなお備えているが、「結局のところ市場は政策担当者を試す傾向があり、彼の対応能力には限界がある」との認識を明らかにした。

それでもベッセント氏の介入が全く影響を及ぼしていないわけではない。日本と協調して円相場を下支えしたことで、少なくとも現時点で円は急反発している。日本の当局が単独介入のためのドル調達を目的に米国債を売却する動きを防いだ可能性も高い。

米財務省は利回りの一段の上昇を抑えるため、国債買い戻しをさらに増やしたり、長期国債の発行規模を縮小したりすることもあり得るだろう。

バンク・オブ・アメリカ (BofA)のストラテジスト、ラルフ・アクセル氏らは買い戻し増額について、「長期国債利回りの抑制を図るさらに踏み込んだ政策の始まりである公算が大きい」と考える。ベッセント氏が30年国債利回りの5.3%突破を防ぐ取り組みを強化する可能性が高いと他の市場関係者もみている。

シティグループのストラテジスト、ジェイソン・ウィリアムズ氏らは「財務長官の『プット(国債相場の下値を保護する保険)』を真剣に受け止めるべきだ」と警戒している。

米財務省の報道官にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。ホワイトハウスのデサイ報道官は「ベッセント財務長官は金融市場のマエストロ(巨匠)であるだけでなく、現代史において最も変革を推進する財務長官の1人だ。トランプ大統領と米国民に成果をもたらすため、一貫して自信の実直さと米経済の力を活用し、さらにそれを高めてきた」とコメントした。

原題:Traders Brush Aside Scott Bessent’s ‘Bet Against Me’ Tough Talk(抜粋)

(ホワイトハウス報道官のコメントを追加して更新します)

--取材協力:Yash Roy、Alice Gledhill、Alice Atkins.

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