(ブルームバーグ):為替の円安修正が急速に進む中、日本株が底堅い動きを見せている。世界景気の好調が維持されている限り、過剰な心配は不要との受け止めが市場で広がりつつあるためだ。
円換算した海外利益の減少や国内製品の輸出競争力の低下が意識される円高局面では株安懸念がしばしば生じるが、現実はより複雑だ。足元の好調な企業業績は堅調な世界景気やAI関連投資の恩恵に加え、値上げの浸透による利益増などさまざまな要因から成り立っている。
実際、円が約40年ぶりの安値から反発し始めた7月下旬以降、東証株価指数(TOPIX)はおおむねプラス圏で推移し、世界の主要指数の円建てパフォーマンスを上回っている。
野村証券の北岡智哉チーフ・エクイティ・ストラテジストは、この先は世界経済の動向や日本企業の値上げ力次第だとし、これらが大きく崩れなければ「円高には耐えられる」との見方を示す。
北岡氏によると、今の日本企業の好業績は円安では説明できない部分が大きい。4-6月期のTOPIX構成企業の1株当たり利益(EPS)は前年同期比41.4%増えたが、野村証の推計では円安による押し上げ効果は6.9ポイント程度。為替の影響が利益増のかなりの部分を占めていた2010年代前半とは異なる構造だ。
米運用会社マシューズ・インターナショナル・キャピタル・マネジメントの竹内俊太郎ポートフォリオマネジャーは、プラザ合意後の円高局面で円高と株高が併存したように、業績が伴っていれば円高が株安につながるとは限らないと指摘する。
企業利益の円安感応度はかつての3分の1程度になり、「円安なら企業収益と株にポジティブという20年前に通用したロジックは変わってきている」と竹内氏は話す。こうした見方は市場でも浸透してきたとし、円相場が歴史的安値から円高局面に変わるなら、「日本株にはポジティブ」だと言う。
みずほ銀行の中島將行シニアストラテジストは日本株の底堅さについて、投資家の関心が為替感応度の高い輸出セクターだけでなく日本の成長性に向かい、「日本の資産全般に対してよりポジティブになっている可能性」を指摘する。
アストリス・アドバイザリー・ジャパン投資戦略責任者のニール・ニューマン氏も強気論者の一人だ。円はいずれ対ドルで130円程度まで強含むと予想するニューマン氏は、日本株は円高による輸入コスト低下の恩恵を受けると読む。
「円高が進む場合、企業はコスト低下ほどは価格を引き下げないため、まずマージンが改善する。その後実際に価格が引き下がってくれば、消費が増えて収益増につながる」とのロジックだ。
円高が日本の基幹輸出産業である自動車セクターに打撃となることは確か。しかし、自動車株は近年の低迷もあり、TOPIX全体の時価総額に占める割合は6%以下と13年のピーク時から半減している。
企業にとって究極的に重要なのは、為替水準そのものよりも円相場の安定だ。BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「急激に円高が進むと企業も対応し切れず業績が悪化する。逆もまたしかりで、急激に円安が進むと消費への影響が懸念される」と指摘。緩やかに円高が進むなら、「海外投資家にとって日本株を買いやすくする要因となる」とみている。
--取材協力:ジョン・チェン.
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