(ブルームバーグ):円相場が上場企業の業績予想の前提となる想定レートを超えて上昇し、株式市場で投資家の関心が円高の恩恵が見込まれる内需関連株に向かい始める可能性がある。
ブルームバーグの集計によると、東証株価指数(TOPIX)構成企業のうち約220社が開示する想定為替レートの平均は1ドル=153円90銭。円相場は日本銀行の利上げ観測などを背景に、8日に一時152円台後半まで上昇した。日本企業は為替変動による年度途中の業績下方修正を避けるため、為替レートを保守的に想定する傾向がある。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、目先は投資家が輸出関連株を売り、円高や金利低下の恩恵を受ける不動産や建設などの内需関連業種に資金を移す可能性があると話す。
東京株式市場で自動車が中心のTOPIX輸送用機器指数は、為替が円高基調に転じた月初から約8%下落。これに対し、建設や電気・ガスなど内需主導業種は市場全体を上回るパフォーマンスとなっている。
最近は為替の影響が比較的小さいAI・半導体関連の存在感が増しているとはいえ、日本株全体としては円安による業績押し上げ効果が依然大きな支えだ。野村証券が第1四半期の営業利益の増減要因を開示する約190社を分析したところ、為替は約8300億円の増益要因で値上げや数量増などの効果を上回った。円安メリットがなくなって利益成長が鈍化すれば、日本株に逆風となる可能性がある。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「一段と円高が進めば、企業業績へのネガティブな影響が意識されやすくなる」と指摘。最近の円高傾向が一過性かどうかが今後の焦点になるとし、「当面は安心感の強い内需株が相対的に強い展開が続く」との見方を示した。
足元の企業業績は値上げの浸透やAI需要などを背景に、為替影響を除いても堅調だ。また、歴史的な円安に至ったファンダメンタルズが大きく変わったわけではなく、今後も円高が続くとは限らない。
三菱UFJ信託銀行の押久保直也チーフ・マーケット・エコノミストは、財政拡張懸念などを背景に円は対ドルで155円程度に落ち着くとみており、この水準であれば製造業はグローバルで勢いを維持できると話す。
それでも、円が想定レートを上回って推移する限り、為替リスクへの警戒感はくすぶりそうだ。シティグループ証券アナリストの芝野正紘氏のリポートによると、半導体業界ではアドバンテスト、レーザーテック、ディスコなどでドルを含む外貨建てでの販売が多く、為替変動が業績に与える影響は比較的大きいという。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、企業は「為替ヘッジや海外生産によって影響を和らげることはできるが、円高が続けば業績の下方修正につながる可能性がある」と述べた。
--取材協力:アリス・フレンチ.
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