(ブルームバーグ):7月の名目賃金は伸び率が約30年ぶりの高い伸びとなった。今春闘での高水準の賃上げが給与に反映される中、基本給に加えて賞与などの特別給与が増加した。利上げ路線を堅持する日本銀行にとって追い風となり得る。
厚生労働省が8日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は前年同月比4.7%増。前月(4.0%増)から伸びが加速し、1997年1月以来の高水準となった。市場予想(3.8%増)を上回った。基本給に相当する所定内給与は4.1%増と、92年4月以来の高い伸びとなった。
物価変動を反映した実質賃金は、「持ち家の帰属家賃を除く」消費者物価指数(CPI)で算出したベースで2.4%増と、7カ月連続で前年を上回った。CPI総合ベースでは2.6%増。伸び率はいずれも21年5月以来の大きさとなった。
今回の結果を受け、市場でくすぶる日銀の利上げペース加速観測が一段と高まる可能性がある。植田和男総裁は1日、物価の上振れリスクに「これまで以上に気を配って政策運営」を行う考えを示し、利上げについて9月を含め毎回の金融政策決定会合で議論すると語った。力強い賃金の増加は、利上げを促す一つの材料になると言える。
野村証券の岡崎康平チーフマーケットエコノミストは、「所定内給与が結構上がっており、明るい動きだ」と指摘。好調な企業収益や人手不足が背景にあり、所得の改善が景気をしっかり支えるという認識は変わらないとの見方を示した。経済と物価のいずれも上振れリスクを意識させる内容として日銀も受け取るだろうとも語った。

日銀の氷見野良三副総裁は先月、物価高の影響を受けながらも個人消費が堅調な背景として、「バブル期以来の人手不足の下でしっかりした賃金の伸びが続いていることが支えとなっている」との認識を示した。日銀は賃金と物価が緩やかに上昇するメカニズムは維持されるとみている。

市場では17、18日の決定会合での利上げ観測が高まっている。市場の金融政策見通しを反映する金利スワップ市場では、日銀が同会合で0.25ポイントへ利上げする確率が約96%となっている。
日銀は7月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、名目賃金は労働需給の引き締まりや春闘などを反映して着実な伸びが続くと見込まれると説明。一方、中東情勢の混乱による原油価格の上昇が交易条件の悪化などを通じて企業収益や家計の実質所得を下押しする要因になるともみており、賃金の動向を注視している。
今春闘の平均賃上げ率は連合が掲げた目標の「5%以上」を3年連続で達成した。連合が7月発表した今春闘の最終回答集計によると、定期昇給を含む平均賃上げ率は5.01%、毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)は3.50%と「3%以上」の目標を実現した。
他のポイント
- パートタイムを除く一般労働者の所定内給与は3.9%増
- パートタイム労働者の時間当たり給与は5.7%増、20年6月以来の伸び
- エコノミストが賃金の基調を把握する上で注目するサンプル替えの影響を受けにくい共通事業所ベースでは、名目賃金は2.8%増-前月4.8%増
- 所定内給与は、全体が3.0%増、一般労働者で2.7%増
- 実質賃金の算出に用いるCPIは、持ち家の帰属家賃を除くベースで2.2%上昇、総合は2.0%上昇
(5段落目にエコノミストコメントを追加して更新しました)
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