(ブルームバーグ):4日の米株式相場は反落。朝方に発表された8月の米雇用統計で雇用者数が予想を上回って増加し、米連邦準備制度理事会(FRB)の9月利上げ観測が強まった。短期債も下落した。
市場関係者の間では、FRBによる次回の政策判断は11日に発表される消費者物価指数(CPI)次第との見方が根強い。短期金融市場では、9月のFRB利上げ確率が50%超まで織り込まれた。S&P500種株価指数は3日ぶりに反落した。目先の金融政策により敏感な2年債利回りは8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した後、上昇幅を縮小した。週明け7日の米市場は、祝日のため休場となる。
円は対ドルで下落。統計発表直後には荒い値動きが続き、一時は前日比0.6%安の1ドル=156円75銭を付ける場面もあった。午後は総じて小安い水準で推移した。
8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)が前月比16万2000人増加した。エコノミスト予想の中央値は5万5000人増だった。失業率は4.1%で横ばい。労働市場には従来考えられていた以上の勢いがあることを示唆した。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、雇用統計は労働市場の底堅さを示す内容だったと指摘。だが、投資家には「良いニュースは悪いニュース」と受け止められる可能性があるとの見方を示した。
「投資家が労働市場をどう捉えようとも、FRBは現在の状況がおおむね完全雇用と一致するとみており、今回の統計はその見方をさらに強めるだろう」と説明。「FRBから見れば労働市場は持ちこたえている。つまり、インフレの方が依然として大きな問題だ」と述べた。
トランプ米大統領は、FRBに対する利下げ圧力を強めた。FRBが行動しなければ、対米黒字国・地域との貿易を打ち切ると警告した。
トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、「素晴らしい雇用の数字が発表されたばかりで、米国の信用力も経済も改善しているのだから、株式相場は上昇するはずだ。それなのに、過去25年間いつもそうだったように株価は下落している。景気が良ければ、インフレへの『恐れ』から景気を『つぶさなければならない』という誤った現実の中でわれわれが生きているからだ」と述べた。
トランプ氏はその後、FRBが利上げすれば債務やインフレを懸念する債券市場に安心感を与えるとの見方を否定し、米国の金利は1%以下であるべきだと述べた。

モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏によると、雇用者数が予想を上回ったことで利上げへの警戒感が強まる可能性が高いものの、実際に利上げに踏み切るかどうかは来週のインフレ統計次第となる。
ゼントナー氏は「インフレ指標が予想を下回れば、FRBは労働市場から発せられる潜在的なインフレのシグナルを、さほど重視しなくてもよいと判断する可能性が高い」と述べた。
ただ、エバコアのクリシュナ・グーハ氏によると、今後発表されるインフレ統計が金利据え置きか利上げかの判断の分かれ目となるぎりぎりの内容だった場合、雇用の強さが利上げ判断を後押しする可能性がある。
米国債
米国債は、短期債が下落した(利回りは上昇)。5年債利回りは一時、2025年1月以来の高水準を付けた。
雇用統計を受けて、短期金融市場では、年末までに累計38bpの利上げが織り込まれた。これは、0.25ポイントの利上げ1回に加え、さらにもう1回の利上げが約50%の確率で行われるとの見方を示している。

雇用統計を受けた値動きは長期債より短期債で大きく、2年債と30年債の利回り差は一時約83bpと、今年7月下旬以来の最小に縮小した。30年債利回りは5.23%と、先月つけた数十年ぶりの高水準がなお視野に入る水準にある。
世界の債券市場は値動きの激しい局面が続いている。米国とイランの戦闘が激化する中、ガス価格が再び上昇し、インフレへの懸念が改めて強まったことで、欧州国債が特に大きな打撃を受けた。
ノルウェー政府系ファンドが国債、とりわけ米国債への配分を減らす案を示したことも注目材料となった。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の分析によれば、提案通りの見直しが行われた場合、年金基金グローバルの米国債保有額は約800億ドル(約12兆5000億円)減る可能性がある。同基金の運用資産額は2兆3000億ドルに上る。
外為
外国為替市場で円はドルに対し、米雇用統計の発表後に大きく振れる展開となった。
円は統計発表直後に156円75銭を付けた後、上昇に転じ、155円30銭台を付ける場面もあった。
午後は総じて156円台前半の小安い水準で推移した。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は雇用統計の発表直後に大きく上昇し、一時0.3%高となった。その後は上げ幅を縮小した。前日には一時0.7%下げ、5月11日以来の安値を付けていた。
原油
ニューヨーク原油相場は祝日を控えた薄商いの中で、方向感を欠く展開となった。米国とイランの戦闘再燃で供給懸念が強まる一方、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けて異例の進展の兆しが見られ、地政学的リスクプレミアムを押し下げた。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、1バレル=91ドル台半ば近辺でほぼ横ばい。今週は米国とイランが報復攻撃を繰り返したが、前夜は比較的落ち着いていた。レーバーデーの連休を前に商いは薄く、米・イラン紛争の先行きが不透明なことから、積極的なポジションは手控えられた。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのレベッカ・バビン氏は「昨夜の軍事行動が静かだったことを受け、相場では上振れの勢いがいくらか弱まった」と指摘。「今週の大幅上昇を受けた利益確定や、薄商いも加わり、複数の要素が重なって」価格を圧迫したと説明した。

原油価格のさらなる重しとなったのは、米国のウィトコフ、クシュナー両特使が今週末にモスクワとキーウを相次いで訪問する見通しだとするアクシオスの報道だ。ロシアのエネルギーインフラに対するウクライナのドローン攻撃は、最近のエネルギー市場で大きな材料となっている。
原油はなお週間ベースでは9%余り上昇。米国の爆撃作戦と、イランによる米軍基地への報復攻撃により、ホルムズ海峡の通航正常化は一段と困難になっている。
戦闘が激化する前は、比較的平穏な時期が続き、ホルムズ海峡の通航量は徐々に回復していたが、戦闘の激化を受け、イランはホルムズ海峡を通航する船舶を標的にするようになった。イランがヨルダン、クウェート、バーレーンに相次いで攻撃を仕掛け、イスラエルもイランから攻撃を受ければ民間インフラを攻撃すると警告したことから、軍事的なエスカレーションが再び繰り返される可能性が、中東全域に重くのしかかっている。

戦闘再燃にもかかわらず、米当局者は域内のエネルギー輸送は引き続き順調だとの見方を示している。こうした推計は、海上原油輸送を追跡する企業が報告する輸送量を大幅に上回っており、トレーダーはその大半を材料視していない。それでも、追跡が難しい船舶によって原油はホルムズ海峡から運び出されている。多くは発見を避けるためトランスポンダーの電源を切っている。こうした輸送が、原油価格の一段の上昇を抑えている。
シンガポールのフィリップ・ノバで市場分析責任者を務めるプリヤンカ・サチデバ氏は、「供給途絶に対するぜい弱性を、市場は改めて価格に織り込んでいる。根本的な安全保障上の問題が解決されない限り、リスクプレミアムを抑えられる期間にも限界がある」と述べた。
WTI先物10月限は前日比0.2%高い1バレル=91.48ドルで終了。国際指標の北海ブレント原油11月限は、76セント(0.8%)上げて96.28ドルで引けた。
金
ニューヨーク金相場は反落。8月の米雇用統計が予想より強かったことから、年内の利上げ観測が高まった。
金スポット価格は一時2%余り下げ、1オンス=4400ドルを割り込む場面も見られた。
統計を受けてドルと2年債利回りが上昇した。いずれも金には向かい風となる。銅相場も小幅に下げた。
INGバンクの商品ストラテジスト、エバ・マンシー氏は「この日の金相場下落は主に、米雇用者数が予想を上回ったことへの反応だ。雇用統計を受けて利回りとドルが上昇し、市場では追加利上げの可能性がさらに織り込まれたため、金の環境は厳しさを増した」と述べた。

前日の金相場は、ウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事の発言を受けて2%余り上昇していた。ウォラー理事は物価圧力に緩和の兆候が続くなら、金利据え置きが望ましいとの見方を示した。
円介入への警戒が強まっていることも、ドル押し下げ圧力を通じて、金には追い風となっている。前日の円相場は2%近く上昇し、それまで1カ月続いたじり安傾向を脱した。日本銀行による利上げ確率が高まっているとの見方が背景にある。前日の円は7月末に行われた日米協調介入以来の大幅高だった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時3分現在、前日比60.29ドル(1.4%)安の1オンス=4412.63ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、63.30ドル(1.4%)下げて4476.60ドルで引けた。
欧州
欧州株市場はストックス欧州600指数がほぼ変わらず。週間ベースでは0.8%下落と約2カ月ぶりの大幅安。過去4週間のうち3週で下落した。米雇用統計を受け、米利上げ観測が強まった。
8月の米雇用統計では、雇用者数が市場予想を上回って増加し、失業率は横ばいだった。労働市場には従来考えられていた以上の勢いがあることを示唆した。市場が織り込む今月の米利上げ確率は約60%。前日は50%前後だった。
欧州債市場では英10年債が前日の上げを維持した。同年債利回りは週間ベースで4週間ぶりに低下した。この日はユーロ圏国債も堅調だった。償還期限が短めの国債が上げをけん引した。
短期金融市場では、来週の欧州中央銀行(ECB)の政策決定を控え、25ベーシスポイント(bp、1bpbp=0.01%)の利上げが織り込まれている。年末までは46bpと想定されている。
イングランド銀行(英中央銀行)の利上げ見通しは年末までに30bpと、やや後退した。総合購買担当者指数(PMI)やインフレ率予想を示す指標が予想を下回ったことが影響した。
9月4日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
原題:Stocks Fall as Jobs Fuel Bets Fed Will Raise Rates: Markets Wrap(抜粋)
Bond Traders Boost Fed-Hike Odds After Jobs, Await Inflation
Dollar Rises After NFP, Yen Drops on Profit Taking: Inside G10
Oil Steadies in Thin Trade With Iran, Ukraine Tensions in Focus
Gold Falls as Strong US Payrolls Power Bets on Fed Rate Hikes
European Stocks Post Weekly Drop as Hot US Jobs Boost Fed Bets
Gilts Snap Weekly Losing Streak, Bunds Gain: End-of-Day Curves
(原文更新に伴い、相場情報などを更新します)
--取材協力:楽山麻理子.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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