(ブルームバーグ):円相場は2日連続で急騰し、ここ1カ月ほど続いた緩やかな下落トレンドが一変した。市場関係者は円相場を支える材料に目を向け始める一方、当局による再介入への警戒も強めている。
日米政府が協調してまで行った円防衛のための介入効果は短命に終わり、市場は当局の行動に疑問を呈してきた。しかし、日本銀行の利上げ加速や利上げ幅拡大の思惑、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産構成見直し観測など円にとってのプラス材料が同時に浮上。当局の介入を巡る臆測も再燃している。
3日の円相場は対ドルで一時2.15%上昇して155円30銭と、日米協調介入以来の大幅高となる勢い。週初には17-18日の日程で開かれる日銀の金融政策決定会合を前にした不安感に押され、160円台に下落していた。
ウォラーFRB理事が、インフレ鈍化が続けば金利据え置きを支持する方向に傾くと述べたことを受け、ドルが全面安となったことも円を支援した。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は約0.6%下落し、5月以来の安値に沈んだ。
バンク・オブ・アメリカの為替ストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「ウォラー氏のハト派的な発言がドルの逆風となり、9月の米利上げ観測をやや後退させた」と指摘。「米雇用やインフレ指標が弱含めば、ドルへの下押し圧力が一段と強まるだろう」と述べた。
みずほ銀行国際為替部為替スポットチームの南英明ディレクターは、海外勢を中心に大型利上げへの思惑から円買いが先行している可能性があると分析。一方で、「利上げの織り込みはやや行き過ぎている感もあり、円安トレンドが転換したとみるのは時期尚早」とも話した。

ウェルズ・ファーゴのアジア太平洋地域チーフストラテジスト、チドゥ・ナラヤナン氏(シンガポール在勤)はこの日の円上昇について、投機筋による円ショートポジションの巻き戻しに加え、日本国内勢のヘッジ需要によって増幅された可能性が高いとの見解を示した。
ただ、こうした資金フローだけで円が大幅に上昇する可能性は低いと指摘。現在の水準から大きく上伸するには、日銀による予想外のタカ派姿勢、日本政府の財政健全化、ドル安などが必要になるだろうと述べた。
事情に詳しい複数の関係者への取材によると、日銀は今月の会合で政策金利を0.25ポイント引き上げ、1.25%とする見込み。物価の上振れリスクが引き続き意識され、利上げペースも柔軟に対応する。
日銀の高田創審議委員は2日、札幌市内での講演後の記者会見で利上げのペースと幅について従来の半年に1回や0.25ポイントではなく、機動的な対応が必要だとの考えを示し、一般論として連続利上げもあり得ると述べていた。

政府・日銀は4月、2024年以降では初となる円買い介入を行い、7月末には日米協調介入も実施し、円の防衛姿勢を明確にした。しかし、中東緊迫の長期化で原油価格が上昇基調に戻り、インフレや金利の高止まり、財政支出の拡大リスクに対する警戒感から円売り圧力は根強く、再び160円台に反落していた。
トレーダーらは、次回の金融政策決定会合後に通貨当局が再度の円買い介入に踏み切るリスクを警戒し始めている。会合後の東京市場はちょうど土日を含め5連休(シルバーウイーク)となり、取引量が減少する中で当局にとっては最大限の効果を得られる可能性があるためだ。
三村淳財務官は3日、為替市場を巡る現状に「全く安心も満足もしていない」とした上で、「引き続き臨戦態勢だ」と語った。足元の動向については「申し上げることはない」と述べた。財務省で記者団に発言した。
この発言について、ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は「最近のこれまでの発言よりも、かなり強い調子だった」と述べた。
市場が為替介入リスクへの警戒を強めているだけに、三村氏が選んだ言葉には重要な意味があるとの見方を示し、「こうした環境では、ドル円が160円を試しに行く可能性はやや低下した。155-160円のレンジの下限に近い水準で推移する可能性が高い」と語った。

ステート・ストリート銀行の若林徳広東京支店長は、「急激な値動きがあった後に誰もが口にするのは『介入なのか』という言葉だ」と指摘。「市場は今後も非常に敏感で、神経質な展開が続く」とみる。4月の介入は日銀会合後のゴールデンウイーク期間に行われており、今回と状況は類似する。
オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、サマラ・ハムード氏は「シルバーウイークは流動性が低下する可能性があり、円相場にさらなる不確実性をもたらすだろう」と予測。円は介入前の安値を再び試す可能性は残っており、それが「日銀会合前後に急速に起こった場合、新たな介入が行われるリスクは大きく高まる」と言う。
日本の財務省は7月30日から8月26日の1カ月間に15兆円強と過去最大の円買い介入を行ったにもかかわらず、金利動向などファンダメンタルズが押し上げ効果を相殺し、ヘッジファンドなど投機筋も介入直後に一時円のショートポジション(売り持ち高)を縮小させたものの、再度売り姿勢に転じている。
加えて、ベッセント米財務長官は再三にわたり日銀に円安対策としての利上げを求める発言を繰り返しており、これに応じられなければ、円の急落リスクは高まる恐れがある。
トレーダーらは、日銀の9月会合の直前に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)にも注目する。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は先週のカンザスシティ連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で、執拗(しつよう)なインフレ圧力に警告を発し、やるべき仕事があると語った。
SBI FXトレードの上田真理人社長は、FRBと日銀の会合、日本の長期連休を控え市場は為替介入の有無を注視しており、実施される水準として「160円台は可能性がある」との認識を示している。
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--取材協力:Yasufumi Saito、鈴木克依、塩原るみ.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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