円を調達通貨とするキャリートレードを解消する動きが加速し、円は対ドルで1カ月ぶりの高値に上昇した。トレーダーが日本銀行の追加利上げ観測を強めたことも円買いを後押しした。

円は3日に2%強上昇した後、4日も上昇分を維持し、財務省が為替介入を実施した5月以来の水準に迫った。17、18両日の金融政策決定会合を前に、日銀の植田和男総裁と高田創審議委員が今週、タカ派的な発言を行ったことが背景にある。高田委員は利上げ幅についても、これまでの0.25ポイントだけでなく、「幅広い選択肢の中で対応していく必要がある」と語った。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによると、3日のオプション取引では、今月満期を迎える円の対ドル・コール(買う権利)の取引量がプット(売る権利)の2.5倍超となった。トレーダーが既存の円ショート(売り持ち)ポジションを解消する動きが背景にある。コールは円がドルに対して上昇すると価値が高まる。

ノムラ・インターナショナルのシニア外国為替オプショントレーダー、サガル・サンブラニ氏(ロンドン在勤)は「円を調達通貨とするキャリートレードの巻き戻しが起きており、中期的には他のG10通貨より円を保有しようとする強い需要が見られる」と指摘。「容易に利益を得られたキャリートレードの局面は終わり、日本から米国への資金フローの規模も大きく変化した可能性があるとの見方が大勢と見受けられる」と話した。

日本は借り入れコストが低いため、円は長年にわたりキャリートレードの調達通貨として広く利用されてきた。キャリートレードでは、投資家が円を借り入れて一段と利回りの高い資産を購入し、円相場が安定しているか下落する限り、金利差から収益を得る。

動画:野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、日銀が9月に25bpの利上げに踏み切るのは妥当だとみており、その後も追加利上げが続く可能性があるとの見方を表明。また、米国からの外圧が当局者の判断にさらなる影響を及ぼす可能性があると指摘した

だが、日銀利上げ観測を背景に日本の金利が上昇し、円高と相場変動の急拡大を招く中、この取引は圧力にさらされている。2年債利回りは今週約14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。

スワップ市場では18日の金融政策決定会合での0.25ポイントの利上げが織り込まれ、さらに来年7月までに同幅の利上げが3回近く実施されることも織り込まれている。実現すれば、2024年初め以降、年平均2回だった利上げペースから大幅に加速することになる。

3日のキャリートレード巻き戻しの影響を受けたのはドルだけではない。ブラジル・レアル、南アフリカ・ランド、メキシコ・ペソなどの高金利通貨はいずれも円に対して1%余り下落した。

ブルームバーグのストラテジスト、ブレンダン・フェイガン氏は「円がドルに対して2%急伸したことは、円安を是正するには日銀が一層積極的に動くことが最も有効だという、これまでで最も明確な証拠だ」とコメントした。

円のショートカバーの余地はさらにある可能性がある。米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、8月25日までの週にレバレッジドファンドは円を差し引き8万1619枚売り越していたほか、資産運用会社も1万8284枚売り越していた。日銀が今月利上げし、その後の追加利上げのペースについて柔軟な姿勢を維持するとの観測から、投資家はこうしたポジションを縮小している。

複数のトレーダーによれば、日本の輸出企業もドルを売って円を買う動きを強めており、円の上昇を後押ししている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、円高は市場心理の幅広い変化を反映していると指摘した。

BofAのアジア太平洋地域G10通貨トレーディング責任者、イワン・スタメノビッチ氏(香港在勤)は「ドル・円の動きは、市場の特定の一角による取引というより、過去48時間の動向を受けた幅広いリスク配分の見直しを反映している様子だ」との見方を示した。

ロンドンでも、円を調達通貨とするキャリートレードの手じまいを巡る議論が市場参加者の間で広がっている。みずほ銀行によると、今週は市場心理の顕著な変化があり、投資家の間で積み上がっていた円と日本国債の弱気ポジションを解消する動きにつながった。

みずほ銀行の中島将行シニアストラテジストは、相場を動かした要因は円のショートP時ション解消で、主にヘッジファンドによるものだったと述べるとともに、日銀の追加利上げ観測も強まったと指摘した。

原題:Carry Trade Exodus Fuels Yen Surge Ahead of BOJ Rate Decision(抜粋)

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