(ブルームバーグ):JPモルガン・チェースのトレーディングデスクは、今後数週間の米国株について「戦術的に慎重」な見方に転じている。ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派的な発言を受け、市場が年内の利上げ観測を強めたことが背景。
米市場インテリジェンス責任者、アンドリュー・タイラー氏率いる同社トレーダーは、金利見通しを巡る疑念が逆風となっていることを理由に、9月15、16両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に、当面は強気姿勢を取り下げた。ただ、経済指標や企業業績などが支えとなり、堅固な市場環境は続くと予想している。
ウォーシュ議長は8月28日、ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)での講演で、インフレ率の有意な鈍化は見られないと指摘した。タイラー氏によると、米金融当局が実際に利上げした場合、トレーダーにとって利上げ局面がどの程度の幅と期間になるのか明確に見通せないという。ウォーシュ議長は、金利政策の先行きについてフォワードガイダンスを示さない方針を打ち出している。
タイラー氏は31日付の顧客向けリポートで、「戦術的に慎重ないし中立的な見方に移行している。株式市場のファンダメンタルズは引き続き堅調だが、短期的な変動要因によって相場は方向感に乏しい展開となる可能性が高い」との考えを示した。
米10年債利回りは31日、約1年7カ月ぶりに4.75%を上回った。原油価格の上昇を背景に、米金融当局が政策金利を引き上げるとの観測が強まった。スワップ市場では、連邦準備制度が9月に0.25ポイント利上げを実施する確率を約70%と織り込んでいる。
ウォーシュ議長は同日、米ノースカロライナ州アッシュビルで開かれている20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、「米経済成長は強まったように見受けられる」と述べるとともに、米国の潜在成長力について「引き続き重要な問題だ」と話した。
9月は米国株のリターンが歴史的に最も低調な月だ。AI関連株への投資が持続するかどうかに加え、インフレ高止まりが続く中で金利が上昇する可能性も警戒されるなど、ウォール街は一連のリスクに直面している。
タイラー氏は6月にも、目先の相場の重しとして金利を巡る不透明感や季節的な弱さ、急伸してきたAI関連株のモメンタム巻き戻しを挙げ、戦術的に慎重な見方に転換。その後実際に、米国株は数週間にわたり下落した経緯がある。
同氏は、4日発表の8月の雇用統計について「極めて重要になる」と指摘。ただ、ウォーシュ議長が米国は完全雇用の状態にあるとの見方を示していることを踏まえると、11日発表の8月の消費者物価指数(CPI)の方が重要だとコメントした。
タイラー氏は「株式の強気相場は、利上げ局面かリセッション(景気後退)のいずれかによって終わる傾向がある」と指摘。「現時点では、今後数四半期にリセッションが顕在化する可能性は極めて低い」一方で、ウォーシュ議長の発言を受け、9月のFOMC会合は利上げの可能性がある「ライブ会合」となったとの見方を示した。
原題:JPMorgan Traders Drop Bullish View on Stocks After Warsh Speech(抜粋)
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